◆「ヤスリがけ実践編」まずは基本から

編集部(以下 編):MPJ技の泉2回目は前回に引き続きヤスリがけについて。解説は線香亭無暗師匠です。
線香亭無暗(以下 無):どうもです。
編:前回ではヤスリがけに使う道具を紹介していただいたんですが、今回は実践編ということで、実際の作業について解説をお願いします。
無:はい。何から説明すればいいんだろ。
編:この間紹介していただいた道具の具体的な使用法とかですね。

無:ああ、はいはい。じゃあ、まず金ヤスリですが、基本的にはヤスリたい部分の形状にあわせて使い分けます。ただ間違えないで欲しいのは、「目的に応じて使い分ける」ということで、決してヤスリの形状にあわせて削ろうとしないこと。例えば平ヤスリなら「平たい部分に使う」というより「平たくしたい部分に使う」という感じです。ここを間違えると、いろんな作業をするのにやたらたくさんのヤスリが必要になってしまう。
編:え、形状にあわせて使い分けるんじゃないんですか?
無:確かにヤスる部分の形状によって使い分けはします。例えば曲面に平ヤスリを使うと余計な面を作ってしまいがちですから、サンドペーパーを当木をせずに使ったり、スポンジヤスリを使ったりする。問題はヤスリがけをする時の意識の問題で、先ほどいったように「こういう形状にしたいから、このヤスリがふさわしい」という選択をすることが重要だと思いますよ。大体、普通プラモデルを作っていて必要になる金ヤスリは「平型」「丸甲」「丸」の三種類くらいですから。この3種を、目的や仕上げに応じた大きさで数種類持っていれば事は足ります。高価な十本以上のセットを買っても、いつも使うやつは決まってきます。よく使うタイプで、使い心地よく使えるものだけ揃えておけばいいと思います。
編:それは師匠が上手だからじゃないですか?
無:いや、これは前回、金ヤスリが少ないっていわれたんで、知り合いのモデラーさんに聞いたんですが、みんな大体同じですね。そんなに多くの種類は使ってない。普段作っている模型のジャンルで、多少ヤスリの揃え方が変わってたりしますけど、基本的には「平・甲丸・丸」があれば足りるよ、っていう人が多いです。それから、意外と重要なのがデザインナイフです。

無:デザインナイフをスクレイパー(カンナ)のように使って、パーツの表面を均します。
編:この写真だと柄のお尻のところにテープが巻いてありますけれど、何か秘密があるんですか?
無:秘密ってほどのもんじゃないんですけど、そういう使い方をしているとすぐ刃がだめになっちゃうんで、切る用途のものとスクレイーパー代わりのものと2本使っているんです。切るほうの切れ味が悪くなったらこっちの柄に付け替えるという。その目印というのがひとつと、このテープの下に爪楊枝が1本巻いてありまして、机の上でコロコロ転がらないようにというのがあります。
編:なるほど、アイディアですね。
無:で、ヤスリが入りにくいようなところは、刃の先端でこそぐようにしてパーツを処理します。例えば……

無:こういうキャタピラのコマの間にある突き出しピンの跡とか、細いヤスリを使ってもいいんですが、経験上デザインナイフを使ったほうが早い。これをデザインナイフで処理したのが次の写真です。

編:結構きれいになるもんですね。
無:ざっと処理してこんな感じですから、この後丁寧にフィニッシュすればヤスリはいりません。もし、どうしてもヤスリをかけたいときは割箸などを削って先端に両面テープを貼り、そこにサンドペーパーを張ります。

編:ずいぶん細いような気がしますが。
無:バックの方眼を見てもらえばわかると思いますが、約1mmくらいですかね。
編:こういう作業はよくなさるんですか?
無:いや、殆んどしません。どうしてもヤスリじゃなくちゃイヤだという場合のみの特例とでも言いましょうか(笑)。 

◆あると便利なヤスリたち 

編:師匠はよくHiQparts製のサンディングスティックのことを書いていらっしゃいますが。 
無:はい、最近では欠かせない道具になってますね。 
編:どのあたりがいいんでしょう。 
無:まあ、いってみれば爪ヤスリみたいなものなんですが、まずそれぞれの番手で硬さが違うのがいい。実はこういうヤスリって、あんまり信用してなかったんですよ。それまでは「当木にペーパー」派だったもんで。当木も素材に工夫してウレタンブロックとかゴムとかね。東急ハンズで仕入れてきて小さく切って使っていた。これならそういう手間がないし、水研ぎしてもサンドペーパーが伸びて浮いてくることもないし。使い勝手に少しコツがいりますが、慣れれば非常に便利です。

編:コツというとどんなものなのでしょう?
無:まずヤスリの面に弾性がありますから、力加減が重要になります。これは普通の金ヤスリでも同じことなんですが、どれだけの力加減でヤスリを扱うかで仕上がりに差がでてきます。金ヤスリのつもりで力を入れて削っていると仕上がりが平面ではなく、曲面になってしまいます。目の細かい番手で一生懸命削るより、荒い番手で軽くヤスっておき、徐々に細かいものに変えていくというのが鉄則です。やったことがない人はおっかなくってやりにくいかもしれませんが、上手くヤスれば下の写真のようにツルツルにすることができますから心配はありませんよ。

   上段左から240、320、400、600、800、1000、1200番で削った後

編:では逆に曲面を削るときなんですが、力を入れて削ればいい、という事ですか?
無:一概には言えません。限度がありますから。曲面に平たいヤスリを使うと、変な削り後を残すことがあるんで、大きな曲面にはやはりスポンジヤスリをオススメします。微妙な三次曲線なんかはサンディングスティックでOKなんですけどね。後は、基本的にヤスリがけが上手くいかないという人は力を入れすぎている場合が多いんです。とくに「エッジが出ない」という人はそういう場合が多い。エッジを立てる場合にはサンディングスティックに限らず、320~400番くらいで形状を出したら、徐々に番手を上げていき、最後は600~1000番で嘗めるように「スー」っと仕上げるのがコツです。
編:そういえば、読者の方からエッジの立て方についての質問が来ていましたが、そのほかのコツはありますか?
無:そうですねぇ、完全な平面が作りたいならヤスる面よりも大きいヤスリを使えばいいんですが、微妙な三次曲線のエッジを立てるのは、やはり力加減のコツを覚えてもらうのがいいでしょうねぇ。
編:エッジを立てるための冶具なんていうのはあるんでしょうか。
無:建築用などの冶具では直角を出すためのものがありますが、模型に適してはいません。いくつか模型用のそういった道具を使ってみたこともあるんですが、ヤスリの力加減ができない人が使っても、同じように仕上がりが歪んでしまうと思います。結局はサンドペーパーに当木かサンディングスティックで用が足りる。
編:やはり力加減を覚えたほうがいいと?
無:その方が早いし、コストもかからない。流用も利くし。何しろ、一度覚えてしまったら一生忘れないんですから一財産ですよ。
編:何事も基本、という事ですか。
無:おっしゃるとおり。

今回はヤスリがけ実践編の基礎を伺ってみました。次回は「ヤスリがけ その3」として応用編をお送りいたします。どうぞお楽しみに。


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