線香亭無暗のやたら模型制作部

■「ドットマトリクス迷彩」を考証して塗装する

「ドットマトリクス塗装」とは読んで字の如く、正方形を主体とした角型に塗り分けられた迷彩塗装のこと。これは目標物をCCDカメラで捕らえるようになった現代戦を考慮して考えられたものです。特に市街戦では周囲の建物が四角いため、目視でも迷彩効果が高いといわれており、別名「都市迷彩」といわれる所以にもなっています。確かにドットで映像を認識するCCDの特性を考えればアリかもしれませんが、一部では実効性を疑問視する声もあります。でも見た目に格好良いので、個人的に良しとします。

さて、今回のカラーリングを考えましょう。
現代のドットマトリクス迷彩は、基本的に「ハイライト=小面積」「中間色=中程度の面積」「暗色=大面積」という配分になっていることが多いようです。あるいは中間色と暗色のが大体同じ割合とかね。そのあたりの面積の配分で個性が出ているような気もします。ただ、おおよそいえるのは中間色と暗色は同系統の色になっているということです。この「同系統」というのは、単に色相的(例えば赤系統とか黄色系統とか無彩色であるとか)に同系統というだけでなく、明度や彩度のいずれかふたつが同系統であり、他の1要素はずいぶんと異なっている、というのがパターンになっているように思います。
それらを考慮したうえで、配色を何種類かコンピュータ上でシミュレートしてみました。シミュレートにはアドビのイラストレーターというDTP用のソフトを使いました。
A、
はい、これは最も一般的と思われる配色。どの面のどの位置にハイライトを持ってくるかがポイントとなりそうです。配色はハイライト=白、中間色=赤系の茶色、暗色=濃いグレーということころでしょうか。
B、
都市迷彩といえばこの無彩色の組み合わせ。どうやら夜間迷彩に重点を置いた配色のようです。配色はハイライト=ライトグレー、中間色=暗めのグレー、暗色=殆んど黒のグレーで決まりです。
C、
これはあんまり見ないサンド迷彩のドットマトリクス版。砂漠など広いところで遠距離であれば目視迷彩効果は高そうです。ハイライト=白かライトサンド、中間色=赤系の茶色、暗色=マホガニーのもっと暗いやつといった具合かな?

さてこのデータを小さくプリントアウトして模型に重ねたりなんかして考えた結果、Aのパターンで行くことにしました。これが一番整合が取りにくそうなので、チャレンジ精神を発揮してみました。オレはやるぜ!!

そうと決まれば作業は急げ、ハイライト塗装の終わった轟雷にマスキングテープを貼り付けていきます。


これは前回までの下塗りの終わった写真。


使うのは当然これ。

HiQpartsのドット迷彩用マスキングテープ。今回はMサイズをチョイスしました。実は、このマスキングテープが発売される前、何回かドットマトリクス塗装にチャレンジしようと思ったこともあるんですが、あまりにも面倒くさそうで脳内シミュレーションの段階で挫折しました。この商品をはじめて見たときに「これならいける」とほくそえんだものです。
全体写真ではわかりにくいのでアップで。

なんとなくどんなものか、わかっていただけましたか?

さあ、このマスキングテープを使った塗装の手順を紹介していきましょう。
まずはハイライト色を全体に塗装した後、模型を一度組み立て、ハイライトを残したい部分にマスキングテープを貼っていきます。今回の轟雷は前回塗った白をハイライトにするので、ここにテープを貼っていけばいいわけです。一度模型を組み立てるのは、塗り上がったときに、どこにどの色が来るのかを正確に把握するためです。

上手く配色するポイントは、仕上がりを想像しながら「ここにハイライトが欲しいよなあ」という所に「控えめ」に貼っていくこと。ハイライトは目に付くので、この段階では少なめのほうが上手く仕上がります

全体的にハイライト部分をマスキングし終わったのがこんな感じ。貼り終わったら、もう一度ばらして中間色の塗装に入ります。

二色目を塗装中。中間色です。塗装レシピは後で詳しく紹介しますね。

そして中間色が乾燥したら、ハイライトのマスキングも貼ったままパーツを組み立てて、今度は中間色を残したい部分をマスキング。最初と同じ作業を繰り返します。

全体のバランスを見ながら、暗色と中間色が半分ずつ位になるように貼っていきます。このあたりになると最初に貼ったハイライト部分と整合がとれなくなってくる部分もあるんですが、そんなときは新しく貼るマスキングテープのほうを切って使うと何とか収まります。別に、マスキングテープの柄どうりに貼らなくってもいいんですから。
そこのあなた、くれぐれも「この写真の配色の方がイイジャン」とか言わないように。


そして暗色の塗装。濃いグレー系です。写真の都合で若干明るく写ってますが、ご勘弁を。なんせ昼となく夜となく模型を作り続けているので、撮影環境が変わってしまうのです。

これが、基本色塗装完了の状態。乾燥を待って、多色塗装の醍醐味が味わえる作業に入ります。あ、書き忘れましたが、各色ごとに丸一日くらいの乾燥時間で塗り重ねています。本当は2~3日欲しいところなんですが、掲載の都合です。

さあ、これが多色塗装の醍醐味だ。マスキング剥がし。マスキングテープを剥がしていくたびに仕上がり塗装が現れていく、快感の作業。ああ、気持ちいい。

マスキングをはがし終えたパーツを組み立ててみました。写真に撮ると、明らかに立体感が出にくい! 迷彩としてはアリかもしれません。こんなことがわかるのも模型制作の楽しみの一つです。
細部の様子はこんな感じ。


さて、ドットマトリクス塗装の手順はちょっと複雑だったのでまとめておきましょうか。基本工作が済んだ後からだと思ってください。
  1. 下地塗装
  2. 一色目=ハイライト塗装
  3. ハイライトを残す部分をマスキング
  4. 二色目=中間色塗装
  5. 中間色を残す部分をマスキング
  6. 三色目=暗色を塗装で完成
となります。

見本にプラバンを使って塗装してみました。ハイライトの白を塗った上にマスキングし、二色目を塗った状態。



上はハイライト、中間色を塗った上にマスキングした状態。下はこれから二色目を塗ろうとする状態。



今回使ったAパターンのカラーレシピはこんな感じです。使ったのはGSIクレオスのラッカー塗料です。


ハイライト=白そのまま、中間色=マホガニー95%+白5%、暗色=ジャーマングレー95%+黒5%
というところでしょうか。どうやらこの記事の配色をシミュレートしてくださっている方もいるようですので、なるべく混色しやすいカラーを選んでみました。あ、パーセントはあくまでも目感です。きちっと計って混色しているわけじゃないので、大体これくらいだと思ってください。

ちなみにBパターンの場合

ハイライト=ホワイト90%+ブラック10%、中間色=M66ブラックグレー95%+ブラック5%、暗色=ジャーマングレー90%+フラットブラック10%

Cパターンの場合

ハイライト=サンディブラウン100%、間色=レッドブラウン100%、暗色=マホガニー90%+フラットブラック10%
見本は見事に塗装に失敗してますが、こんな感じだと思います。前に塗った塗料が乾ききらないうちに次の塗料を塗るとこうなるという、悪い見本になりました。

■仕上げはウェザリング

さて、ここからは仕上げ作業としてウェザリングをしてみましょう。

本体部分は大まかに以下のような作業をしています。
  1. エナメル塗料のハルレッドでウォッシング。
  2. 部分的にエナメル塗料のタンでウォッシング。
  3. ハルレッド、フラットブラックなどで調子を見ながらスミイレ。
  4. エナメルのジャーマングレー+フラットブラウン+ホワイトでエッジのみをドライブラシ。
  5. 田宮のウェザリングマスターAセットからライトサンドとサンドでエッジを中心にウェザリング。
こんな作業を全体の調子をみながら行っています。
続いてキャタピラ周りの仕上げ。

キャタピラにはちょっとヘビーめにウェザリングしてます。
手順を紹介すると
  1. 転輪はMrカラーのジャーマングレーで塗った後、エナメルのハルレッドでスミイレ。
  2. キャタピラ部分はMrカラーのジャーマングレーで塗った後、ラバーブロック部分をフラットブラックで筆塗り。
  3. エナメルのフラットブラックでウォッシングした後、エナメルのタン、ジャーマングレー、ホワイト等を混ぜた塗料でドライブラシ。
  4. 田宮のウェザリングマスターAセットからライトサンドとサンドでエッジを中心にハイライトを入れる。
  5. 転輪部分のみごく少量の「こすって銀SUN」で磨く。
  6. 100均でかった「やわらかパステル」の黄土色を少量塗りつけ、こびりついた土を再現。
てな感じです。
まあ、このあたりの作業はやっては戻り、戻ってはやりの行ったり来たりなので、正確な順番で作業してお仕舞い、というわけではないんですけどね。ウェザリングの基本は実機の使用状況の再現ですから、その機体がどんな風に扱われ、汚れていくのかを試行錯誤しながらやっていく訳です。今回の作例ではネット上の実物の戦車の写真がずいぶん参考になりました。足元は汚れがヘビーなのにボディはそんなに汚れてないとかね。なので足の接地面から上体に行くに従って汚れを少なく表現してあります。

こっちのほうがわかりやすいかな。

上半身はざっくり埃を被った風。使用後にまだ掃除をしていないという体で。

はい、続いてのディティールアップ・ポイント。

センサー類にはお約束のHiQparts製ミラージュデカール。肩口のセンサー部分には真鍮線を曲げたガードパイプを装着。胸の上面にはヘックスリベット1mmを追加。

肩口のウェポンラッチにはワンポイントでヘックスリベット1mmを、背面のウェポンラッチにはマイナスモールド1mmとメタルリングの組み合わせでディティールを追加しました。今回は塗装を目立たせるためにあまりやってませんが、「全身ボルトヘッドだらけ」なんていうのも面白そうです。なにより戦車っぽい。そのあたりは皆さんのお好みでどうぞ。

各部のマーキングは箱絵を参考にHiQpartsのウォーターサイドデカール]の数字部分を組み合わせました。「<」の部分は市販のホワイトのデカールから切り出したものです。

そしてフトモモ付け根部分のライトにはSPプレート2mm用と1mm用を使用。レンズはWAVE製Hアイズ クリアに着色して使用しました。そしてここにも真鍮線で自作したガードパイプを追加。結構よく割れそうな感じがしたもんで。戦車用のエッチングパーツなどを流用してもいいかもしれませんね。
わかりにくいのでパーツを外してとってみました。



このキットには「握手」「平手」「火器の持手」「握った持手」と豊富な手首オプションが付いています。写真に写っているのだけじゃありません。じゃあ何で写真に撮らないかというと……
撮影のときまで塗るのを忘れてたんです。失敬! ナイフはサンディングスティックの600番から1500番まで磨いた後、Mrカラーのスーパーファインシルバーを塗り、クリアコートしたものをコンパウンドで磨いています。

ちょっと手首を変えるだけで表情が変わります。

せっかくなので平手とナイフで写真を撮ってみました。

さて、これでいよいよ完成! となります。ここから後は完成品ギャラリーでご覧下さい。

では、次回も乞御期待!!

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※この記事は線香亭無暗氏の個人ブログ「やたら模型制作部」に掲載されたものを再編集して掲載したものです。

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