線香亭無暗のやたら模型制作室
 はい皆様、今回は1週間のご無沙汰でした。
 前回の記事で、ある方より今回のお題の紫電改について、「主脚のリンケージについてるスプリングはこうやって止まってるんですよ」ということをご教授いただいて大変ありがたい、と書いたところ、どうやら仲間のモデラー陣に火が点いてしまった模様で、「紫電改のココは本当はこうなってる」だの、「この部分の塗装はこうなってる」だの、聞いてもいないのに教えてくれるんで大変困っております(笑)。まあ、スケール物に考証は欠かせないので、参考になるといえばなるんですが、作業が済んじゃってもう手がつけられないところを指摘されたりするとモチベーションがダダ下がり。年寄りモデラーはそれだから嫌われるんだよ、なんて悪態のひとつもつきたい気分です(笑)。というか、お前ら一人1個ずつこのキット買えよ! モデラーなんだからそういうのは自分で再現しなさい!! 口動かさないで手動かせっ!!!
 と、年末の忙しさによるストレスも発散したところで、今回も張り切って模型を作りましょう!!

 今回はハセガワ 1/32「川西 N1K2-J 局地戦闘機 紫電改」その5回目にして完成編。早速、張り切ってまいりましょう!

 前回までで基本的な工作や塗装は終了。
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 ここからフィニッシュに向けてひた走るぞ! ってところで終わってました。

 今回の作業はここから。
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 はい、地味でスイマセン。キャノピーのマスキング。フレームを残してガラス部分をマスキングするという、選択する手法も少なく避けて通れない、「航空機モデルの難関のひとつ」とも言われるキャノピーのマスキングですが、さすが1/32という大スケール。それほど悪戦苦闘しなくてもマスキングできます。
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 キットでは最初から3分割されたキャノピーが付属していて、パーツの合いもバッチリ。センターのキャノピーは直線主体のマスキングなので、太めに切り出したマスキングテープで縁取り、全体に貼ってからいらない部分を切り取ります。曲線部分は極細に切ったマスキングテープを使って縁取り、中をうめていきます。これらは前に1/48の零戦21型を作った時と同じ手順ですね。詳しくはこちらあたりの記事をご覧ください。
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 キャノピーのマスキング完成。塗装時に塗料が吹き込んでも大丈夫なように、キャノピーの中側もマスキングしてあります。これができたら、さあ塗装、ということになるんですが、いきなり機体色を塗ったりはしません。
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 まずは機体に塗った塗料に黒を混ぜた色を塗ります。
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 その上から本体と同じ色を塗装。これは「キャノピーのフレームの内側も塗装されてますよ」って雰囲気を出すための演出。
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 裏側から見るとこんな色に見えます。本当は機内色と同じ色で塗ってあるんじゃないかと思うんですが、それだと明るすぎて変に目立ってしまいそうな予感がしたんで、こんな色にしてみました。まあ模型的な演出ということで。

 で、このキットを組もうという方に、ちょっとご注意。
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 このキットの風防パーツですが、後部の丸みを佩びたパーツが2種類付属しています。これは風防を開いた時と閉じた時、別のパーツを使うようになってるからなんです。このパーツを間違えるとどういうことになるかというと、
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 これが閉じた状態。この時点では何の問題もありません。でもこのままセンターの風防を後ろに乗せようとすると、
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 こんなふうに斜めになって隙間があいちゃう。これを避けるために、ちょっとだけ小さな後部風防が付いてるんですね。ちなみに正しいパーツで組むとこんなふうになります。
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 はい、実はこの写真、仕上がった後に撮ったものなんでちょっとフライングなんですが、意外と間違えやすい箇所かなぁ、なんて思ったのでお知らせしておきます(実はワタシも間違って組んでたんで……、というのはナイショ)。

 さて、続いては343-15番機の特徴、胴体の黄色いラインを塗装で再現してみましょう。
 キットにはこのラインのデカールも付属しますが、昔の写真を見ていると、もうちょっと乱暴というか、アバウトに塗装してあるように見えます。付属デカールだと整然としすぎていて工場で塗られているみたいな感じになってしまいそう。実際の15番機は“パイロットが自ら塗った”なんていう説もあるくらいですから、もっとアバウトな感じを再現してみようと思います。
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 まず用意するのは模型と同じ大きさに拡大した実機の写真。手元の資料の写真をスキャンして拡大、印刷したものを使用します。そこから寸法を取ったマスキングテープを、写真を見ながら貼り付けます。
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 これが資料写真のライン部分。明らかに手書きっぽい感じがしません?
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 そして、これが写真を参考に貼り付けたラインのマスキング。もちろんこのままじゃ塗装できません。
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 そこで細切りのマスキングテープをラインのふちに貼り付けていきます。これが実際のマスキングのフチ部分になるわけですね。
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 反対側も同じようにライン部分を貼り付けてからフチをマスキング。両側のラインはそれっぽく繋げておきます。このあたりが曲線のマスキングになるため1mm程度に細切りしたマスキングテープを使っているわけです。
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 ラインのフチをマスキングし終えたら、その他の部分をマスキング。そうしたら、最初に貼ったラインのマスキングテープを剥がせば、きれいなラインがのこります。
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 ここに最初に塗るのは白。これは上に塗る黄色をなるべく薄く乗せ、かつ綺麗に発色させるため。今回はガイアノーツのEx-ホワイトを使っています。ちなみに、343-15番機のラインは白だと思われていた時期がありました。その後、元343空に所属していた方の証言から黄色だということが判明したという事実があります。ワタシも子供の頃、このラインを白で塗った覚えがあります。えへへ、歳がバレるな。
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 白が乾いたらお次は黄色。今回はガイアノーツの黄橙色(とうこうしょく)を使っています。この部分、もっと普通の、レモンイエローのような黄色だという説もありますが、物資の乏しかった当時にそれほど多くの種類の塗料があったとも思えないので、主翼前フチに使用するのと同じ色だったと考える方が腑に落ちる感じがします。まあ、本当の所はわかりませんが。
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 あ、ついでに塗りなおしたのが機首のエンジンが付く部分の塗装。これ、あまり考えずに写真のように機体と同じ色で塗っちゃったんですが、後で説明書をよく見てみたら機内色と同じ指定でした。なのでライン塗りのついでに修正します。
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 全部の色を塗り終えたら楽しいマスキングテープはがし。失敗してないかどうか、緊張の一瞬でもあります。
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 はい、デキター!
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 ライン部分は付属デカールよりもほんのちょっと太めに。加えて2本目のラインの角度を変えて上にいくほどライン間が狭まるようになってます。
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 機首部分も無事成功。実はこれ三菱の航空機の機内色と同じ色なんでよね。初期の零戦などはサビ止めを塗った後に耐熱塗料を塗ってたらしいんですが、この頃になるとそんな塗料もなかったのかもしれません。比較的塗装量が少なかった三菱の機内用の塗料を流用していたのかもしれませんね。
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 さぁて、これで基本塗装は全部終了。ものすごく簡単に仕上げたいという方は、ここでむりやり「完成!」と叫んで作業を終えてもかまわないかな(笑)。まあ、ワタシの場合、いくら叫んでも誰も聞いてくれないと思うので粛々と作業を続けます。

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 続いての工程はデカール貼り。日の丸やラインなどは塗装しちゃってるので、細かい注意書きなどを貼っていきます。
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 まずは比較的大きいところから。垂直尾翼の機体番号を貼ろうと思いますが、ここでちょっと思案。実機の写真で見てみると、この部分のナンバーは明らかに手書きっぽい。しかもステンシルなんて使わないで直接筆でレタリングしちゃってる感じがします。本当の所は薄学にして知らないんですが、そんな気がしたら再現したくなるのがモデラーというもの。そこで、それぞれの数字を切放してそれらしく貼り付けることにしました。
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 はい、こんな感じ。左面の先頭の「3」が、ちょっと左にかしいでいたり、「4」がちょっと下にずれていたり、といった所を再現してみました。
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 右側は比較的整った感じですが、「4」の入れ位置に苦労したんでしょうね。2つ目の「3」との間が開いています。このあたりの数字、このスケールなら手書きにするといいかもしれません。今回はやらなかったけど。
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 あとは地道にコーション貼り。ほとんどは給油口の注意書きや点検ハッチなどを示したものです。これを貼ってて思ったんですが、1/32でこのサイズのコーションの大きさですから、1/144のロボットなんかに貼るコーションはかなり巨大なんですよね。そのあたりも模型的な演出のひとつなんだなぁ、なんて改めて気付かされました。
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 ちょっと面白いのが主翼付け根の「フムナ」。手元の資料によると343-15番機では左側は「踏ムナ」、右側は「フムナ」だったということ。なんで左右で違っちゃったのか、原因は不明ですが面白いのでこの説を採用してみました。
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 さぁて、いろんなことを考えながらデカールも張り終えたのでトップコートしよう。
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 そこで搭乗するのはガイアノーツのEx-クリアー。フラットクリアーじゃありませんよ。グロスの方のクリアー。
 普通ならフラットか、せめてセミグロスでトップコートするところなんですが、ここが今回の塗装のミソ。

 大戦時の日本海軍機の仕上げとして、昔からいわれているのが「機体のベコベコ具合をどう表現するか」という問題。実際、当時の機体を見てみると表面が相当「ベコベコ」しています。これは、当時の技術では機械生産ができず、ほとんどが手作りで仕上げられていたため。つまり手打ちの板金で仕上げられていたんですね。面白いことに開戦当時の零戦などの写真を見ると、それほど目立たなかった「ベコベコ」が、時代が進むにつれてひどくなっていくのがわかります。同じ零戦でも52型くらいになると、もう相当「ベコベコ」。これは機体制作に関わる職人が減って、学徒動員などで招集された未経験者が製造したためだとも言われています。

 モデラーとしてはこの「ベコベコ」、何とか上手く表現できないものかとグラデーションをかけたり、実際に機体を削ってみたり、ひとまわり細く削った機体パーツに極薄の金属板を貼り付けてみたりと、実に様々なトライアルを行ってきました。そういえば大分昔だけどキットの状態でもうベコベコが再現してある、なんていうのもあったな。

 で、今回の挑戦は「光沢の加減でベコベコをイメージさせる」。今に残る実記の写真などを見ると、機体表面の凹凸に当たる光の加減がベコベコを感じさせています。じゃあ意識的に表面の光沢をコントロールすればベコベコが表現できるんじゃないかと考えました。一応テストはしてみたものの、実際の模型に適用するのは初めて。果たして上手くいきますのやらどうやら。

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 やると決めたら覚悟を決めて、機体全体にグロスのクリアーを吹き付けます。なんだか見慣れないので、急にスケール感がおかしくなったような錯覚に陥ります。慣れって怖いなぁ。
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 アップでみるとグロスの不思議な感じが倍増。なんだかちょっと不安になってきた(笑)。
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 グロスで塗った機体を一度組み立ててみました。あれ、組んじゃうとあんまり気にならない。でも、なんだか大きさが伝わりにくい、つまりスケール感が狂ってる感じは否めない。
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 で、次に搭乗するのはEx-フラットクリアー。これを部分的に吹き付けて「光のあたり具合」を強制的に作っちゃおうという魂胆です。
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 ごちゃごちゃ言っても始まらないので、とりあえず“やってみた”写真。左はクリアーのみ、右はフラットクリアーを重ねたもの。ここまで来て、ようやく意図が伝わったような気がする(笑)。
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 はい、フラットクリアー塗り終わりました。塗装はアネスト岩田のカスタムマイクロン0.18で絵を描くように吹き付けていきました。このエアブラシの特徴は「射角が正確でミストが細かい」こと。こういった塗装には最適なんです。
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 こっちの写真の方が効果がわかりやすいかな? 拡大で見てみてくださいね。どうです、ちょっとベコベコに見えますか? こういう表現はあんまり小さいスケールだと非常にやりにくいんで、大スケール向きの手法なんじゃないかと思います。

 さて、これで本体の塗装は終了。あとは細かい部品を付けていきましょう。
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 まずはキャノピー。前は位置を合わせて少量の流し込み用接着剤で止めました。
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 真ん中と後ろのキャノピーはお得意のPiTMULTI・2を使って貼り剥がしができるように。
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 これでキャノピーの開閉が再現できるようになりました。

 続いては翼端灯や編隊灯。
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 編隊灯はこのキットでも最小のパーツ。無くさないように注意が必要です。塗装してから接着するのはアブナイと判断して、接着後に塗装することにしまいした。
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 このパーツの接着に使ったのはアクアリンカー。仕上がりはクリアーで、溶剤系ではないので塗装面を犯しません。
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 アクアリンカーを使ったのはライトらしさを出すのに下地にシルバーを塗ってあるため。溶剤系の接着剤だと、せっかく塗ったシルバーを侵してあんまり光らない、なんてことが起こりがちです。
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 少量のアクアリンカーでクリアーパーツを止めたらタミヤのアクリル塗料、クリアーレッドで塗装。アクリルを使ったのは筆塗りでも艶が出やすいからです。
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 翼端灯も同じように接着、塗装しました。ううん、このあたり中に電球のディテールとか入れたほうが良かったかな? まあ、それは次に作る時に考えよう。
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 あ、ちなみに尾灯はクリアーですからね。そのままで問題ナシです。

 で、本体加工の最期はコチラ。
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 アンテナ線の取り付け。この部分、結局主柱も尾翼の上の金具も金属で作ったオリジナルパーツに差換えた部分。針金の張力にもバッチリ耐えてくれます。金属の加工についてはいくつかご質問をいただいているので、改めてどこかでご紹介したいと思います。

 さあ、これで工作、塗装共々終了。残すはウェザリングです。
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 まずは塗装の剥がれの表現。いわゆる「ハゲチョロ」というヤツ。実機の写真を参考に見えないところは想像力を豊かにして筆で入れていきます。
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 今回使ったのはタミヤのエナメル塗料のクロームシルバー。ラッカー塗料の上なら「やりすぎた」と思ったら下地に影響を与えずに拭き取れるので便利です。
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 この時期の日本海軍機は機体の塗装が剥がれやすいのも特徴。パイロットの乗降の際に触れそうな部分を考えてシルバーを入れていきます。ドライブラシのように「ザッ、ザッ」とこするのではなく、面相筆などで「チョロチョロ」と置いていく感じ。
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 翼の方は若干控えめ。点検ハッチや給弾ハッチなどを中心に入れています。
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 ハゲチョロ完成!
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 あとはエンジンの排気管と薬莢の放出口にチョロッとスス表現。塗料はジャーマングレー、カスタムマイクロンを使って細吹きしています。
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 ついでに抑揚に乏しい感じがした機体下面にかる~くシャドウ吹き。これもジャーマングレーを使っています。
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 ということでハセガワ 1/32「川西 N1K2-J 局地戦闘機 紫電改」ようやく完成! 詳しくはギャラリーでお楽しみください。

 いやあ、このキット、大スケールの航空機を非常にシンプルに、高い精度でまとめているにもかかわらず、やればやるほど味が出る。初心者の方でもそれほどのストレスを感じないで組めるでしょうし、エキスパートの方ならディテールの限界に挑戦! なんてこともできる。今回は自分好みにやりたいとこを徹底的にディテールアップするという方向性で作ってみましたが、もちろん素組みに塗装のみでも十分な満足感が得られると思います。「大スケールの航空機に興味はあるけど、何を買ったらいいかわからない」なんて方には特にオススメ。仕上がったときの大きさは充実感十分ですよ。唯一の問題はデカイので保管が大変ってことくらいかな(笑)。

 さて、1/32紫電改も無事完成。次週の更新は1回お休みをいただいて、お次は新年2014年1月3日の更新となります。そのかわり年末には今年一年を振り返る記事を掲載予定。そちらの方もどうぞお楽しみに。

 ちょっと気が早いけど、今年も一年後愛顧いただきありがとうございました。また来年もよろしくお願いしますネ! ということで今回はここまで。

 お後がよろしいようで。

 

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