線香亭無暗のやたら模型制作室
はい皆様、一週間のご無沙汰です。
年も押し詰まって大掃除真っ最中なんて方もいらっしゃると思いますが、やたら模型制作室は通常更新。いつもと変わらずお届けします。
さて、先日原稿で「新しい道具が届いた」なんて書いたら、意外と反応が多かった。「超音波洗浄機買ったの?」とか「超音波カッターでしょ?」とか、実に色んなことをいわれまして、それなら公開しちゃおうということで、新兵器大公開。これです。

超音波じゃなくてすいませんが、念願のコンプレッサーとエアブラシが新しくなりました! いやいや、実は大分前から塗装環境が崩壊しておりまして、どうしようかと悩んでたんですが、やっと念願かなって全面リニューアル。WAVEさんのタンク付きコンプレッサー《317》ユーザーとなりました。

で、エアブラシはこれ。

こちらもWAVEさんの《スーパーエアブラシ アドバンス》。0.3のダブルアクションです。外観上の特徴は王冠型の先っちょ。

近吹きする際の吹き返しを少なくしてくれます。もちろん普通の形の先っちょも付いています。そして、もうひとつの特徴が「エアマチックシステム」。

このカップの下側のつまみで吹き付けるカラーの風量を調節、普通のエアブラシの「細吹き/ベタ塗り」とは違う、「濃い/淡い」という表現が手元の操作だけでできます。これ使ってみないとわかりにくいんですが、物凄く便利。というわけで塗装環境も新しくなった所で今年最後の「やたら模型制作室」、気持ちも新たに新ネタでまいりましょう。

今回からのお題はこれ!

WAVEさんの1/24 レジンキャストキット「X・ATH-02ストライクドッグ」です。

写真はWAVEさんより完成見本写真をお借りしたもの。まずはちょこっと機体解説しておきましょう。
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X・ATH-02 ストライクドッグ」はアニメ『装甲騎兵ボトムズ』に登場するAT(=アーマードトルーパー)で、主人公キリコ・キュービーのライバルともいえるPS(=パーフェクト・ソルジャー)、プロト・ツーことイプシロンの専用機としてクメン編終盤から登場します。PSとは脳改造と記憶操作などで極限の戦闘能力を追求した“究極の兵士”。したがって専用機である「ストライクドッグ」はそれに対応するようなスペックを有しています。これは“戦闘兵器は使い捨て”というコンセプトで作られているボトムズワールドでは少数派。数少ない“専用特別機”のうちのひとつです。基本的にはドッグ系のデザインを踏襲していますが、大きさはスコープドッグが3804mmなのに対して4250mmと、大型の「H級AT」に分類されます。型番の頭に付く「X」は試作ATを表すアルファベット。こんな所でも“特別感”を演出しているわけですね。
劇中での活躍はTV版クメン編で初登場した際の圧倒的な強さと、決着が付くまで延々と繰り返されるキリコとの死闘が印象的です。TV放映当時には今ひとつ感情移入できなかったイプシロンも、歳をとった今見てみると、実は一番可愛そうだったのは彼だったんじゃないかと思ったりして、感慨もひとしお。実は、TV版最終回から32年後の世界を描いたOVA「装甲騎兵ボトムズ 幻影編」の中にも謎のパイロットが操縦する機体として再登場しますが、こちらはちょこっとだけデザインが異なります。今回は悲劇のヒーロー“イプシロン”の乗機としてTV版で仕上げてみたいと思います。
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さて、今回は「やたら模型制作室」、ひとつ初挑戦なことがあります。それはこのキットが“レジンキット”だということ。レジンキットとは読んで字の如く、無発砲ウレタン=レジンで成型された組み立てキットのことで、日本では80年代初頭の「ガレージキットブーム」に端を発します。
80年代初頭、キャラクターモデルの隆盛は「ガレージキットブーム」という新たなムーブメントを産み出しました。当時のメーカー製キャラクターキットは、まだまだといったレベルで、“コレジャナイ感”満載のものも多く、それなら自分でフルスクラッチしちゃおうという猛者が多くいた時代。そういったフルスクラッチ作品をみて、「どうしてもそれが欲しいよ」という人も多かった。そこで歯科技工用のシリコンゴムやレジンで複製したのがレジン製ガレージキットの始まりです。それまでのガレージキットといえばバキュームフォームかピューターやエッチングを使用したものが殆んどでしたが、シリコンゴム&レジンの組み合わせは、日本発の手法としてガレージキットの世界を一変させたといっても過言ではありません。また、その造型自体も「俺の思う○○はこうなんだっ!」といった個性あふれるものが多く、大量生産ゆえに平均値を採らなければならないインジェクションキットでは味わえない魅力あふれるキットが多くリリースされました。それから「こりゃぁインジェクションでキット化はされないだろう」といったものが数多くリリースされたのも魅力のひとつでした。ただ、初期のレジンキットはまだ個人の手による型抜きといったものが多く、真空や遠心なんていう手法も確立されていませんから、非常に難易度の高いキットが多かった。ワタシも経験がありますが、何というか、パーツというよりもレジンのカタマリ、接合部なんか絶対に合わなくて、キットというよりも素材? といったものも多くありました。ワタシを初め、そんな時代にレジンキットを経験してしまった方は尻込みしてしまうかもしれませんが、いやはやなんとも、今の技術はすごい!! インジェクションキットと遜色のない“商品”としての完成度となっています。まあ、今回の作例をご覧あれ、といった感じで、年末年始のボトムズ祭り、完成までどうぞお付き合いのほどを。

それじゃあ早速制作にかかりましょう。

まずはレジン製のキットパーツ一式。ご覧のとおりカラーレジンで成型されているので、とりあえず組み立てれば劇中のイメージに近い仕上がりになります。パーツ数は111と、インジェクションキットと比較しても少ない感じです。

このキット、可動するのでポリキャップなどが付属します。付属するのはお馴染みのWAVE製ポリキャップシリーズ。市販されているものと同じものが同梱されています。カメラ部用にHアイズが付属するのも親切。

じゃあ組立て前に個々のパーツを見ておきましょうか。

レジンキットでは全てのパーツがランナーにくっ付いているわけではないので、組立て前にパーツが揃っているか確認しておくのが常識。それから殆んどの場合、パーツ自体にナンバーなどふっていないので、これから作るものの形状を良く確かめておくことも大事です。その方がパーツの確認も、この後の組立てもスムーズに進みますからね。

各パーツのゲート部分。写真左の大き目のパーツはゲート跡が残っています。レジンはプラよりもうんと柔らかい素材なので、カッターなどでも楽にゲート処理することができます。写真右は小さめのパーツ。ランナーにくっついた状態になっていますが、型取り具合が工夫されていて、殆んどのパーツがアンダーゲート状態になっているので非常に処理がラクチン。そのあたりはインジェクションキットより楽かもしれません。

さて、ひととおりパーツの確認をしたら離型剤を落としておきましょう。離型剤とは、主にゴム型の損傷を防ぐために使用される油分のこと。これを落としておかないと、塗装の時にひどい目に合います。といってもこのストライクドッグ、なんと驚きの離型剤レスという仕様。離型剤がなくても抜けるんですね。技術の進歩は恐ろしい。じゃあなんで離型剤落としに付けているのかといえば、ちょっとだけ心配だったから。ガイアノーツのレジンウォッシュに20分ばかり浸けておきます。

時間がたってレジンウォッシュから取り出したら、中性洗剤をつけた歯ブラシなどでパーツを丁寧に洗って乾かせば下ごしらえは完了。「そんなのめんどくさいよ!」と思うかもしれませんが、この作業の間に、どこにどのパーツが付くのか、どのランナーにどのパーツがくっついているのかが大体把握できます。まあ、レジンキット制作前の儀式のようなもんですな。なんか、せっかく離型剤レスキットなのにWAVEさん、申し訳ない。別に信用してないわけじゃないんですよ。あくまで念のためとレジンキットの扱いを説明するためなんで誤解しないでくださいね(笑)。
 

さて、儀式が済んだら各パーツの成型ですが、これはもうインジェクションキットと全く同じ。ランナーから切り離し、ゲートの処理をしたらヤスリがけ。たださっきも書いたようにレジンはプラよりも大分柔らかい素材なので、切りすぎ、削りすぎには十分注意してください。

もう一箇所、左手のクロー部分で説明。基本的には写真左から、上の写真と同じ手順で作業していますが、レジンキットの場合、インジェクションキットと比較して型抜きのためのテーパーが多く付いている傾向があります。なので、このクローのようなパーツは、その辺を意識して成型すると、完成後の見栄えがぐっと良くなります。


それから、レジンキットの泣き所はパーツに出る気泡。現代のメーカー製レジンキットでは“見るからに気泡でボッコボコ”なんてことはまずありませんが、成型のためにヤスリがけをしていると出てくるなんてことは良くあります。

そういう時の対処法。まずデザインナイフなどで気泡を広げてしまいます。

そうしたら次に気泡部分に瞬間接着剤を流し込み。深い気泡なら高粘度のものを、浅い気泡なら普通の瞬着が使いやすい。

瞬着が硬化したらヤスリで形状を整えます。仕上がりがわかりやすいようにサフを吹いてみたのが右の写真。しっかり穴埋めできてますね。ちょいと面倒ですが、気泡はレジンキットの宿命。しっかり作業しておくことで美しく仕上がります。


もうひとつ、意外と見逃しがちなのがダボの処理。写真のように可動部の軸なんかに多いんですが、成型不良がないように軸部分に設けられた余分なでっぱりも、しっかり処理しておきましょう。写真左は処理前、右は処理後です。

それでは本格的に制作に取り掛かりましょう。まずは腕から。

これが両腕のパーツ一式。構成は良く考えられていて、厄介な所は塗装後に組立てができるよう、良く考慮されています。

ではまず、肩の四角いパーツから。モナカの中に付属の5mmポリキャップを挟み込むようになっています。

ポリキャップの軸部分はあらかじめ短く切っておきます。切り取った軸を計ってみたら、丁度2.5mmでした。

で、接着、となるわけですが、ここにはセメダインのSUPER Xを使いました。瞬着でも良いんですが、経験上大きな力がかかるところにはこっちの方が確実です。瞬着だときれいに接着剤が回っていないことがあり、完成後に稼動させていると、“パキッ!”といくことがあるので。

で、十分に硬化時間をとったらヤスリで成型して加工終了。


続いて二の腕。ここは碗部可動の中心だけあって、計3個のポリキャップを仕込みます。

それぞれのポリキャップの軸を切り取って埋め込み。上面にはSUPER Xを流し込んでおいてしっかりとポリキャップを止めてしまいましょう。ヒジ部分は左右から2個のポリキャップをはめ込み。

で、ここでちょっと裏技。接着剤が硬化したら、リューターなどで上面の中央部分をちょこっと削っておきます。肩の四角いパーツの下面は成型の都合上、若干でっぱり気味になるので、こちらを削ってやることで、隙間なくぴったり組みあがるという寸法です。


さて、作例記事1回目にして、今回の作例最大の精度が必要な工作。左手のクロー部分を組み立ててみましょう。まずはそれぞれのパーツをしっかりと成型しておきます。

ここが問題の部分。クローとその基部は別々に稼動し、マシンガンが出てくる仕掛け。

可動フレームにあたるパーツにはポリキャップの2mmのランナーを通し、ベストな長さになるよう調整します。このあたり慎重に行かないとユルユルになったり、きつずぎて可動しなくなったりします。何度も仮組みを繰り返して、確認しながらの作業になります。

で、ちょっと考えて、パーツ接着前にフレームとクローをスターブライトシルバーで塗装しておきました。接着後にマスキングしておきます。レジンの塗装については後ほどあらためて詳しく解説しますね。

で、続いてこっちは反対側のクロー部分。パーツに1.5mmの穴を開けてクローを取り付け、真鍮線を通すように指示されています。が、ウチに1.5mmの真鍮線がなかったので1mmで代用。写真には写ってませんが、クロー組み込み後、真鍮線の目隠しに丸いパーツを取付けるようになっています。

で、こっちのクローも塗装。2本のクローの基部は完成後もポリキャップでスライド可動するようになっています。

組み付けるとこんな感じ。大分良い感じで仕上がりました。

難関突破の後、その他のパーツを取り付けて両腕は大体完成。細かいパーツは瞬着で接着してますが、ヒジ部分のパーツなどはフレーム部塗装後にくっつけたほうが楽そうなので、まだ接着していません。

さて、当連載初のレジンキット制作ですが、いかがでしたでしょうか? 記事を読んでいただけるとわかっていただけると思うんですが、最近のレジンキットは“インジェクションキットよりもラクチンにできるんじゃない?”なんて所も多数。馴染みがなくてレジンキットにしり込みしていた方は、ぜひともこの機会に挑戦してみてほしいと思います。
それでは今回はこの辺で。
次回も、乞御期待!!&良いお年を!!

 
(C)サンライズ

詳しくはWAVE HP
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2 Responses to “WAVE 1/24レジンキャストキット「X・ATH-02 ストライクドッグ」 その1”

  • うさぎ小屋の住人:

    遂にガレージキットの作例ですね。
    ガレージキット人口が減って寂しい今、
    少しでも敷居が下がると嬉しいですね。
    それにしても最近のボトムズの気に入りようは異常だと思います(笑)。

    • 線香亭 無暗:

      うさぎさん

      2011年最後のコメントありがとううございます。
      最近のガレキ、作ってみるとわかりますが、パーツ数のやたら多いインジェクションキットよりも
      組立てははるかにラクチン。
      この機会に“作ってみようというかな”という方が増えると嬉しいですな。

      >それにしても最近のボトムズの気に入りようは異常だと思います(笑)。

      誰の差金だと思ってるんですか、大佐!!
      来年も宜しくお願いいたします。
      良いお年を!!

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