線香亭無暗のやたら模型制作室
はい皆様、ご機嫌いかがでしょうか。
ええ~、この連載の作例をやる時は、ひと作例ごとに何かひとつ、変わったことをお見せしようという隠されたコンセプトがありまして、まあ、それがキットの選択だったり、改造だったり、塗装だったり、それぞれの作例によって変わるわけなんですが、今回の作例でいうと「海外SFキット」と「市販エッチングパーツの使用」「電飾」なんていうところが挙げられます。考えようによっては3つも見せ場があるお得な作例というわけですが、今回はもうひとつ、普段はやらないようなことをお見せしようという、これがもう、大変贅沢な作例となっております。
てなわけで、今回はメビウスモデル 1/144「スペースクリッパー」、いよいよ完成編。今回は盛りだくさんですよ! 最後までしっかりお付き合いのほどを。


さて、前回は本体の基本工作も済んで、ディテールの再生や追加をしようというところで終わってました。

はい、こんな状態。まるでグレーの鰹節のよう。今回はここにディテールを加えていくところから開始!

と思って資料を探したんですが、これが全然見つからない。2001年関連の資料なら、洋書も含めて6~7冊はあったはずなんで家中ひっくり返してみたんですが、ようやく見つかったのは昔のSFマガジン1冊だけ。一体どこに行ったんだオレの資料!! ネットで検索してみても、これという資料は出てこない。じゃあ映像は? ってことで探してみましたが、ウチにあるのはDVDじゃなくてビデオテープ。しかもデッキが故障中……。ということで悩むことしばし。よし、悩んでいてもしょうがない。ここは想像力を働かして手元にある資料だけで何とかしよう。


そこで、ようやく見つけ出したSFマガジンやらキットの説明書、パッケージなんかを見ながらスジボリを追加していきます。こんなことなら初めに資料を探しておくんだった。まあでも、ある意味自由な感じで作業できるので、これはこれで楽しいような気もする。Oh! フリーダム!!

スジボリと共に各部の凸ディテールなんかも追加していきます。写真はサフを塗った状態。ディテールは薄手のプラバンで自作し、厚みを調整してから貼り付けます。参考にしたのはキットに施されていたディテールや付属デカール、ようやく探し出した書籍資料など。特に胴体上面後方あたりはデカールのディテールを再現してみました。こういった貼り付けタイプのディテールを施すときには、接着後に600~800番程度のサンドペーパーを軽く当てて、塗装前にサフを吹いておくと完成後の馴染みがよくなります。

主翼部分は、キットのままではツルンとしてディテールが掘られていません。そこで、付属デカールを見ながらスジボリを追加。機体下面にもスジボリを追加しています。

スジボリ追加のついでにインテーク風のディテールも追加。これ付属デカールで用意されてるんですが、黒いの貼るだけっていうのも芸がないかなぁと。なので彫り込みで再現することにしました。

手順としてはまず付属デカールを胴体に貼っておいて、その形に合わせてカッターや小さい彫刻刀などで掘り込めば簡単。なハズだったんですが……、反対側を失敗しちゃった。

そういう時のリカバリー方法。まずは失敗したディテールの回りを広めに彫りこんでおいて、写真右のような部品をプラバンで作っておきます。

そうしたら彫りこんだ穴にポリパテを詰め込んで、プラバンで作ったパーツにメンタムを塗ったものを“ムニュ”っと押し込み。ポリパテが大体固まったら引っこ抜きます。後は面位置にあわせてヤスればディテール再生終了。

そんなこんなを繰り返しつつ、最終的にサフを吹いて工作は完了。

なかなか良い感じに仕上がっております。資料不足でプロップ再現とはいきませんでしたが、ある意味“オレモデル”的な仕上げとなりました。

さて、ここからはいよいよ塗装。

今回はいつもとちょっと違う手順で塗装します。いつもなら模型に塗る色をぜ~んぶ調色してから塗り始めんるんですが、今回、最初に作った色は写真の一色だけ。ガイアノーツのEx-ホワイトインテリアカラーを1:1位で混ぜたものに、ちょっとだけサンシャインイエローを入れたもの。そこにEx-ブラックをチョコッと足して明度を調整し、調色が済んだ後にフラットベースを入れてます。

これは塗装見本。全て上の塗料を基本として純色シアンを混ぜたりブラックを混ぜたり、あるいはニュートラルグレーを混ぜたりしたもの。どんな組み合わせにしようかとテストした所です。ここから4色ぐらいをチョイスして塗装してみたいと思います。

塗装前に『ここはこの色』っていうのを考えておいて、その部分だけ塗装、マスキングという手順をとります。基本的にはスジボリに沿って塗り分けますが、部分的にマスキングのみで塗り訳した部分もあります。そうすることでスジボリの太さを変更するのと同じような効果が出るんですね。

塗装手順もいつもと違って明度の低い順から。色の再現性でいうと明度の高い順からのほうが良いんですが、そうするとマスキングが非常に面倒になるので逆手順で行いました。ガイアカラーだと、そのあたり隠蔽力が強めなので助かります。後は塗ってはマスキング、塗ってはマスキングの繰り返し。写真は最後の1色を塗る直前の状態。最後の1色は最初に作った色ですね。

てな感じで塗装完了。

ちょいと派手目の仕上がりかな、とも思いますが、そこは狙い通り。さてここからが問題だ。

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通常の手順ではここから『デカール貼り』という事になるんですが、これが問題。実はこのキット、重要なデカールが付属していません。
ええ~、映画「2001年宇宙の旅」をご覧になったことのある方は“あれっ”と思ってらっしゃると思うんですが、この「スペースクリッパー」、劇中ではちゃんと『オリオン号』という名前が付いていまして、機体の各所に、実在の航空会社「PAN AMERICAN 航空」、通称“パンナム”のロゴがあしらわれていました。実際のパンナム航空は2001年を迎える前に倒産してしまったわけですが、最初に映画を見たときには、実在する航空会社のロゴがバッチリ表示されているというのにビックリしたのと同時に、非常にリアリティーを感じたものです。このメビウスのキット、昔オーロラから発売されていたもののリニューアル再販なんですが、確か旧商品名は「パンナム スペースクリッパー」となっていて、パンナムのロゴが付属していたと記憶しています。ところがメビウス版ではこのロゴが付属しなくなっちゃった。多分、大人の事情なんだと思いますが、2001年ファンとしてはぜひとも映画の中の姿を再現したい。そうなるとこのロゴのデカールを自作しなくちゃなりません。

オリジナルデカールの制作方法は色々ありますが、まあ、代表的なのは家庭用のプリンターで出力するというものでしょう。アルプスの熱転写型プリンターなんかはデカール向きなんですが、すでに販売終了となった今では入手困難。ネットオークションなどに頼るしかありません。オマケに付属品もだんだん入手困難になってきてるという状況。インクジェットタイプでも最近では色んなアイテムが発売されていますが、市販のデカールと比較すると、やっぱり出来上がりはちょいと見劣りします。じゃあどうすりゃいいの? という話なんですが、デカールに負けないくらい美しく、高い精度でオリジナルのデカールを作る方法があります。それがクロマティックというモノ。

クロマティックとはオリジナルで転写式のシートが制作できるというもので、簡単に言えばオリジナルのインレタだと思えばいいでしょう。パッケージデザイン等の分野では昔からよく使われてまして、カンプ(デザイン見本)の制作などには欠かせない技術となっています。残念ながら“ご家庭で簡単に”というわけにはいかないので、そういったサービスを扱っていらっしゃる業者さんにお願いして作ってもらう事になりますが、せっかくここまで作った今回の作例。パンナムロゴも美しく仕上げたい! ということで、このクロマチックを制作することにしました。お願いしたのは東京都中央区にある有限会社エイドクラフトさん(HPアドレス:http://www.aidcraft.co.jp Tel:03-5541-6608)。「これこれこういう訳で……」とお願いした所、快くご協力いただけることになりました。感謝感激! どうもありがとうございます。
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クロマティックの制作で、まず必要になるのは元となるデータ。模型の貼り位置を確認してしっかり採寸し、アドビのイラストレーターというドローソフトで元データを作成します。元のデータはこんな感じ。データ制作に必要になるパンナムのロゴは、ネット検索で探してきました。

ここから一旦リスフィルムにおこして、そこからクロマティックが制作されるわけですね。エイドクラフトさんに伺ったところ、イラストレータなどで制作するベクターデータだけでなく、JPEG等のピクセルデータや手書きのデータ等でも対応していただけるということですが、入稿方法にコツがありますのでデータ作成の前に確認したほうがいいでしょう。個人の発注にも対応していただけるということなので、発注の前にあらかじめ相談してみてくださいね。

そして、いよいよ出来上がってきたのが下の写真。



今回は見本に送付したデータを加工していただいて、数枚に分けて制作していただきました。ご覧いただけるとわかると思うんですが、これがすごい精度。特に最後の赤とグレーのヤツなんか1mmも無いんですからこれはすごい。

これは再現可能なサイズを確認するために作っておいたデータ。一番太いラインは1pt=約0.35mm、一番細いラインは0.3pt=約0.105mmですから、いかに精度が高いかわかっていただけると思います。エイドクラフトさんに伺ったところ、通常のリスフィルムではなく高精度、高細密なタイプのものを使っていただいたとの事。だからこれだけ細かいデータも再現できるんですね。
ちなみに今回制作したクロマティックのお値段は、総額で¥10,185-(税込み)ということで、コストが高いのが玉にキズ。これは高細密のリスフィルムを使用したことと、複数色を一枚にまとめるダイレクトクロマティック(赤とグレーのデータ)を使ったために割高になっているということで、使用する色やサイズによっても値段は異なります。まあ、気軽に発注というわけには行きませんが、ここ一番では非常に頼りになる方法です。オリジナルのコーションデカールを作っておくなんて使い方も楽しいですね。使い方と発注の仕方で、模型分野でも色々と使用法が広がりそうな技術です。

これは見本にいただいたもの。写真上がダイレクトクロマティックといって複数色を一枚の転写シートに再現できるもの。下は通常のクロマティックです。

さあて、これが来たからには千人力。早速、使用してみましたよ。

貼り方には若干コツがあります。写真左から、1)まずはクロマティックの貼りたい部分だけを切り取り、貼りたい部分に仮留め 2)先の丸いものでゆっくりとこすり付けていく 3)慎重にシートを剥がして転写完了。転写できているかどうかは、こすりつけた部分の色の変化で確認します。真ん中の写真を見てもらえると、シートの左側の文字が薄くなってますね。ここが転写の済んだ部分。ムラがないようにしっかりと転写しておくのがコツです。デカールと違って転写部分以外に余白がないのでシルバリングしにくいというのもクロマティックの魅力のひとつです。

丸いロゴはぴったりの位置に平行を維持して貼りつける自信がなかったので、一旦市販のクリアーデカールに転写してから円形に切り抜いて貼り付けました。こんな使い方もできるんですね。

機体各所には極小の赤&グレーのコーションを貼り付け。デザインはキット付属のデカールを参考に、一回りサイズを小さくしてあります。

主翼下面にも同じようにコーションを配置。翼部分のPAN AMロゴはちょっとした遊び心。劇中でも裏側が出てくることはなかったように記憶していますので、こんなふうにしてみました。

キット付属のデカールも切り取ってあちこちに使ってあります。特にエンジンブロック部分には結構効果的。

さて、デカールを貼り終えたら仕上げにEx-フラットクリアーを吹いてツヤを整えれば出来上がり。クロマティック部分も問題なく吹き終えることができました。

さて、今回は“クロマティック”という大技を投入して完成したメビウス 1/144 「スペースクリッパー」。いや、もうここではオリオン号と呼ばせていただきましょう。ご協力いただいたプラッツさん、エイドクラフトさんに感謝。お後はギャラリーでお楽しみ下さい。

いやー、今回の作例は楽しかった。資料不足でプロップ再現とは行きませんでしたが、それでもやっぱり、この手のキットは作っていて充実感があります。1回目の原稿にも書きましたが、『はい、キットはここまで。後はみんなで工夫してね』っていわれているような潔さ。手を加えれば加えるほどイメージに近くなってくる充実感。これこそ海外SFキットの醍醐味というものです。皆さんも気になったキットがあったら是非一度挑戦してみることをオススメします。あ、それからクロマティックもね。こちらも市販デカールに比べて値は張りますが、コスト以上の充実感を味あわせてくれますよ。

さて、それでは次回は何を作ろうかな、って所で、お後がよろしいようで。

詳しくはプラッツHPへ
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