編集部(以下 編)「師匠、今回は『モデラーのための色彩学』に寄せられたユーザーの方からのご質問にお答えしようという趣向ですよ」
線香亭無暗(以下 無)「うん、さっき寄せられた質問を読んだけど、結構色々きてるね」
「いやぁ、MPJ始まって以来の大反響なんですよ」
「質問の種類もバラエティーに富んでるね。色々な人が見てくれてるっていうのがわかって嬉しいね」
「じゃあ、なるべく沢山お答えしたいんで、早速行きましょうか」
「はいはい」
「では、『モデラーのための色彩学』特別編ということで、早速まいります」

◆具体的な明度調整の目安とは

「では早速この質問から。K-jyaさんからのご質問で『それぞれで、1/60、1/100、1/144などのスケールに応じた見本を作っておくといいということが書いてありましたが、線香亭無暗さんはどのような感じでアレンジするのですか?』という質問です。これ、スケールに応じた明度の調整の話のところで出た話ですね」
「ううん、その模型ごとに微妙にアレンジを変えるから一概には言えないんだけど……。じゃあ、ためしにブラック100%の塗装指定の場合を考えてみようか」
「はい」
「大体こんな感じ。あくまでイメージだけど」

「あれ、1/60はもう真っ黒じゃないんですね」
「うん。微妙な色味だけどね。黒ってちょっと明度を上げるだけで模型に表情が出るんだ。1/144はもうちょっと明るくてもいいかな。他の色との兼ね合いもあるけど」
「他の色の場合はどうです? 例えば赤とか」
「ううーん、こんな感じかな」

「1/144位になるとピンクみたいに見えますけど」
「そこへんがミソでね。何度も言うけど、そのあたりは他の色との兼ね合いなんだ。塗りあがった時に赤に見えればいいんだよ。そこで思い切れないで生色を塗っちゃうと“惜しい”仕上がりになっちゃう。まあ、ここに出した色はあくまでも参考なんで、どんな明度でまとめるかは、それぞれが試してみて欲しいね」

◆色の3属性は調整段階で変わってしまうんじゃないの?

「続いてはカマノンさんからのご質問です。『モデラーのための色彩学で色相、明度、彩度を順番に調色するという事でしたが、それぞれを合わせていくとそれぞれの段階で、結局全部に影響してしまうのではないでしょうか。そのあたりがよくわからないので説明して欲しいです』との事ですが」
「ううーん。この方のいってることは正しいんだけど、もちっと記事を読みこんで欲しかった。ええと、『彩度の調整』のところで説明したように、色の3属性はそれぞれ相関的に変化するものだから、どれかを調整すればそれぞれに影響は出るんだ。ただし、『調色をする上での手順』として色の3属性をそれぞれ別個に捉えて手順を踏むことで、目的の色に近づけるのがグッと楽になる。だから最初の『元となる色』の混色では、なるべく彩度を落とさないようにしたりするんだけどね。途中で微調整が利くように考えて。もちろん“そんなことしなくてもオレの調色はバッチリだぜ”っていう人がいるならそれに越したことはないけど、調色をする上での手順として『色の3属性』という知識に基づいて順番に処理していくとわかりやすいよ、って話だから」
「なるほど。わかりました」
「まあ、この記事ではあくまでも『色彩学』っていうフォーマットに則って話したわけだから、全く違う視点で調色している人がいるかもしれない。それはそれで間違いじゃないんで、絶対に色彩学上の観念にしたがって調色する必要はないんだけどね」

◆「日常の観察」ってどうやるの?

「続いてはあめっちさんのご質問です。『日常の生活の中での観察が大事との事ですが、無暗師匠はどんなものを、どんなふうに観察しているんですか? また、その時のコツのような物があれば教えて下さい』とのことです」
「これはもう、ありとあらゆるものを見てるよ。あ、そういえばこの間面白い写真を撮ったから見せようか」
「お願いします」
「ほら、こんなの」

「煙突ですか?」
「うん、うちのベランダから見えるごみ処理施設の煙突なんだけど、白にブルーラインっていうのが、中々洒落てるよね。本当はもっと鮮やかなブルーなんだろうけど、空気遠近法のおかげで丁度センスよくまとまってる感じがする。そんでもって、この写真を拡大するとこんなふうになる」

「おお、つるっとしてるわけじゃないんですね」
「そうだね。避雷針と本体の面を構成するワンブロックの大きさの対比なんかは相当面白い。オマケに天辺におじさんがいたりする(笑)」
「ホントだ」
「窓から顔を出してるおじさんもいるよ」

「面白いですね」
「この煙突、家から250mくらい離れたところにあるんだけど、調べてみたら150mあるらしい。そうやって後からデータを調べてみるっていうのも大事だよね。目安になるから。どんなものでもそうやって調べてみると、必ず引っかかる所がある。“何を観察するのか”を考えるよりも、そういう“引っかかる所”を蓄積していくのがいいと思うよ」
「なるほど、わかりました」

◆具体的なカラーの決め方って?

「次はすごく具体的なんですが、『キャラクター物の彩度、明度について、自身で決着が付いていない物が「1/600 イデオン」です。巨大建築重機を発見する度に観察するのですが、解決に至りません。ご指導いただきたく、宜しくお願い致します』というナカノヤスシさんからのご質問です」
「これ、自分が決着つけちゃってもいいのかな? なんか楽しみを奪うようで申し訳ないんだけど(笑)」
「いやいや、決着つけちゃってくださいよ。せっかくご質問いただいたんですから(笑)」
「そうだねぇ。ご指導ってほどのこともないけど、1/600のイデオンっていうと模型のサイズは1/100ガンダムとほぼ同じくらいだよね。実物は105mっていう設定だ。相当でかいよね」
「そうですね」
「そうなると参考になるのは巨大建設機械というよりも建物のイメージだな。デカイ船とか。しかも真っ赤っかだからね。結構厄介な色だよね」
「そんなに大きくて真っ赤な建物なんて、早々ないですもんね」
「そうなると、こんな感じの色で塗ってみちゃどうだろうね?」

「あれ、2色なんですか? 片方は大分ピンクですけど」
「うん、さっきの煙突の写真を思い出して欲しいんだけど、あれくらい大きいものが、ぺたっと均等な面でできてることって少ないと思うんだ。だから2色の赤の塗り分けで非均一な面構成っていうのを演出してみたらカッコいいんじゃない? スターウォーズとかスタートレックのプロップみたいに。それに、明るいほうのピンクを使うことで、暗いほうのピンクがなんだか赤く見えて来るんだよ」
「ああ、なるほど」
「もちろんスケール感を演出するには塗装だけじゃなくて、ピチッっとエッジを立てておくことも重要だよ。もうC面なんかいらない、みたいな」
「ああ、なんだか完成のイメージが涌いてきました」
「こんな感じでいいのかな? あくまでも自分が作るならっていう前提で考えてみたけど。まあ、参考になるかどうかはわからないけど、ちょっと挑戦しがいがあるでしょ」
「そうですね。参考にしていただけるといいですね」

◆なんでそんな面倒なことをやらなくちゃいけないの?

「次はちょっとヘビーなご質問、というよりご意見を頂きました。kawaiさんからのメールですが、『モデラーのための色彩学を読みましたが、なぜこんなことをやらければいけないのかがわかりません。模型は個人の趣味なので自分が満足すればいいんじゃないでしょうか? 自分は殆んどガンプラしか作りませんが、部分塗装でフィニッシュしたり、全塗装でも指定どおりに塗って楽しんでいますし、それで満足しています。この記事を読むと、そういったことを否定されているように感じました』という事なんですけれども」
「ヘビーっていうより、こういう意見は少なからずあるだろうなぁ、とは思ってたけどね(笑)。まず、この方の言っていることで大きく間違っているのは『なぜこんなことをやらければいけないのか』ってところ。『絶対やんなくちゃいけない』なんて、そんなこと一言も言ってない。これは“やたら模型制作室”の記事でも同じだけれど、それぞれが参考になるところをチョイスしてやってもらえればいいという事を再三再四言ってるんだけど、どうもご理解いただけない人たちがいるみたいで、ちょっと困る。もちろん模型はごく一部の人を除いて個人の趣味なんだから、自由に楽しんでいいものなんだけれど、それで本当に満足してるんなら、なぜこんな記事を読んじゃったんだろうね。満足してるんなら必要ないはずじゃないかと思うんだけど」
「確かに、そういわれればそうですね」
「それはやっぱり『もうちょっと上手くなりたいなぁ』と思ってるからなんだと思うんだよね。模型に限らず、物を作っていると、できた時は満足なんだけど、後からよく見てみると『ここがちょっと』って所が見えてきたりするじゃない」
「ああ、よくありますよね」
「だから次に作るときには同じ失敗をしないように注意する。そうやって少しずつ上手になっていくんだよ。自分の手を動かして、頭を使うから経験が蓄積されるんであって、『知ってるだけで上手くなる』なんてことは絶対にないと断言できる。だから自分の制作姿勢と異なったものでも参考になることは多いよ。それを否定しちゃうと自分以外の発想を受け付けないって事になっちゃう。もし自分だけの世界で、自分だけの模型を作っていたいなら気に入らないことは無視してしまえばいい。それでも誰からも怒られることはないから。でもそれじゃぁちょっと寂しくないですか、って事を言いたいんだけどね」

◆簡単に作ってしまうことはいけないこと?

「ううーん。それでも『簡単にできるほうがいい』っていう気持ちはわかるような気がします」
「『簡単にできる』っていうのが悪いことだとは思わないけど、じゃあ、『簡単にはできない』って事は悪いことかって言うと、これは絶対にそうじゃない。模型は手をかけただけ自分のものになっていく。キットって、元々は説明書どうりに組み立てるだけの“半完成品”のはずなのに、作った人の数だけ個性がある。それが面白いんじゃないのかな? それにはやっぱり、それぞれの思い入れや嗜好、テクニックやなんかが投入されているって事が重要なんだと思う。もちろんキットを組んだままで満足ならそれでもいい。でも、少しでも『もうちょっと上手くなりたいなぁ』と思う気持ちがあるなら、他人の作例やノウハウなんかを参考にするのが近道だと思うよ」
「それでも“模型は自由に作っていいものだから”って意見は根強いんでしょうねぇ。『上手に作れなきゃ価値がないなんていわせない』みたいな」
「それもちょっとおかしい発想だと思うんだよね。『上手に作れなきゃ価値がない』んじゃなくて、『上手に作ってあるものは素晴らしい』ってことだと思うよ。そういう作品は、その作者なりのノウハウが投入されていて、“自由だ”って言いながらも、その作者自身のしっかりした“縛り”があって作られている。そういう制作プロセスを無視して結果だけ見てると『上手じゃなければ価値がない』なんて妙なことを言い出すことになる。そういうことを踏まえたうえでの“自由”ならいいんだけど、作り物において制作のプロセスを無視した“自由”は“自由”とは言わないんじゃない? そういう“自由な作品”って、やっぱりっどっかに違和感があるんだよ。どうもその辺がごっちゃになってる人がいるみたいだね。まあ、『違和感があっても自由だ』って言われちゃうと、もう勝手にやってください、としか言い様がないんだけどさ(笑)。『たかが模型、されど模型』って感じかなぁ。まあ、世の中がこれだけインスタントな時代になってるから、時代に逆行した趣味だなぁとは思うけど(笑)」
「でもそれだからこそ『制作のプロセスを大事にすることに価値がある』んですよね」
「おおっ! いい事言った!! まさにそのとおり。制作のプロセスを考えるって事は、逆に考えると『自分のまわりにあるもの全てには、それぞれに制作に関わっている人がいる』って事を理解することにも繋がるんだよ。“どうやって作ろうか”と考えることは、それ以外のものが“どうやって作られているのか”を考えることに繋がるからね。それが希薄になってくると、どうしても他人への敬意が希薄になってくる」
「あ、なんか話が模型からズレてきたんで質問に戻ります」
「う……ここからがいい話なのに……」

◆デカールを貼る意味とは?

「続いては。小西晴之さんからのご質問です。この方、3月の震災で大きな被害のあった宮城県多賀城市からご質問をお寄せ頂きました」
「ああ、嬉しいねぇ。ちょっと落ち着かれたのかな?」
「メールによると、ご自宅は被害に遭われたようですが、最近になってやっと模型を作ってみようかと思い立った、とお知らせいただいてます」
「これは本当に嬉しい。応援してます。模型を楽しんでください」
「で、こんなご質問です。『最近、他誌の塗装の特集で、“デカールも塗装の一部”という記事を読みました。その辺りを線香亭氏はどのようにお考えなのか聞いてみたいのですが?』との事ですが」
「ううーん。他誌の記事に関してはその雑誌に問い合わせていただいたほうが(笑)……」
「せっかくご質問いただいたんですからお答えしましょうよ」
「そうだね。じゃあ、あくまで自分の考え方ってことで話をしよう。まず、キャラクターモデルのデカールって、大まかに2種類あると思うんだよ。ひとつは実機なんかに貼られている注意書きやナンバリングなんかを再現したもの。いわゆる“コーションデカール”とか“ナンバーデカール”というヤツ。もうひとつは純粋なデザインとして施されるマーキング。パーソナルマークや機体名なんかだよね」
「そうですね」
「コーションデカールなんかは注意書きだから、単純に『ここには貼ってあるだろう』ってところに貼る。ただし、ありそうなところ全部に張るわけじゃなくて、面やラインの流れを阻害するような所には貼らないでおくことが多い。逆に流れを止めたいところに貼ったりね。そういうのは作る模型のデザインによる所が大きい」
「師匠はHiQpartsのNCデカールを使ってることが多いですよね」
「うん。NCの05を使うことが多い。市販のデカールの中で一番ちっちゃいんだよ、NC05が。それにカルトグラフの印刷だから透けも少ないしね」
「やっぱり“小さい”っていうのは重要ですか?」
「そうだねぇ、どちらかっていうと他のものが大きすぎるんだと思うんだけど。模型と同スケールのフィギュアなんかと比べてみるとわかるけど、胴体よりも大きい注意書きって、ほとんどないでしょ」
「確かにそうですね(笑)」
「それでも“ここ一番”っていう場所には大きめのデカールを貼ることもあるけどね。色のアレンジと同じで、“リアリティーよりも見栄え優先”って所を何箇所か作ると全体が締まるんで。ただやっぱり、コーションデカールの場合は『実物だったらここに貼ってあるだろうなぁ』っていうのが基本かな」
「師匠はパーソナルマークとかナンバーとかあんまり張らないですよね」
「うん。全然貼らないわけじゃないけど、それもリアリティーを考えると、それほど必要ないんじゃないかなぁと思うことが多くてさ。特にナンバーデカールなんかは注意してる」
「それはどういうことですか」
「例えば戦場で各機体のナンバーを明確にする意味っていうのを考えてみると、表示したほうがいい場合もあるし、表示しないほうがいい場合もある。それこそ連邦軍なんかだったら、大量の量産機を投入するから、現場での混乱を避けるためにナンバリングを明確にするっていうのはわかるんだけど、公国軍だと物資が少ないのを敵に悟らせないために、わざとナンバリングは隠すだろう、とかね」
「なるほど。そういう考え方もありますね」
「演出のうちのひとつだよね。『貼らない演出』っていう。あとド派手なグラフィカル処理をしたデカールっていうのは、単純な好みの問題であんまりやらない。たま~にやってみたくなることもあるんだけどね(笑)」
「師匠のそういう作例も見てみたい気がしますけど(笑)」
「じゃあ機会があったらってことで(笑)。それでも、その処理が有効な設定は考えちゃうよね。デ“モンストレーション機”だとかさ。それよりも最近気になるのは“読めないナンバーデカール”だよ」
「なんですか、それ?」
「いや、なんか特殊な書体で字間ツメツメのナンバーデカールが売ってるんだけどさ。字間の詰めすぎで、一見して数字が判読できない(笑)。もう、そうなると一体どう使っていいのやらわからないよね。はたしてナンバーデカールと言えるのだろうか、っていう(笑)」
「模様として使うとか(笑)」
「まあ、結局そういうことなんだろうけど、だったら模様のほうがいい。どうせなら、ちょっとでも意味を持たせたいじゃないか。キャラクターモデルを実用機械として捉えるなら、あんまり無意味な表現をするっていうのもなぁ、っていうね。まあ、これはあくまでも自分の考え方だから、その辺は好みの問題だと思うんで、各自で考えてもらうのがいいだろうね」
「じゃあ、『自分なりの表現』を考えてもらうって事で」
「“それもまた楽し”ってことで」

◆指定色から離れることができないんですが……

「続いてはコンデジ一眼さんのご質問です。『塗装をする時に設定を無視して、指定色以外で塗ることができません。こういった記事を読んでいると挑戦してみようと思うのですが、いざ塗装という時になるとやっぱり画面でみたときの印象を優先してしまい、設定を無視することができません。ただ師匠の作品を見ると設定色以外でもまとまって見えるので、挑戦はしてみたいです。いったいどうしたらいいでしょうか』とのことですが」
「いやぁ、なんとなく気持ちはわかるんだけどね(笑)。『画面でみたときの印象を再現したい』っていう。ただ、よく見てもらうとわかると思うんだけど、自分の作例で“完全に設定無視”って言うのは殆んどないんだよ。これは作例として制作する上で『その機体に見えないといけないんじゃない?』っていう気の使いもあってなんだけど(笑)。だから『設定を無視してる』訳じゃなくて、『設定を自分なりに解釈して』塗ってるんだけどね」
「『設定を解釈する』ってどういうことなんですか」
「それはこの記事の1回目の一番最初に言ったように“アニメの彩色と実際の彩色は違うもの”っていうのを前提にして、『これが実際にあったらこんな感じの色彩なんじゃないか』っていうことを考えてるってこと。設定を無視してるんじゃなくて、あくまでも『設定を解釈したらこうなりました』って感じかな。例えば塗装に限らず、『これが実際にあったらここはこうなってはいないだろう』って所を修正したりする。模型は実物じゃないからね。プラスチック・インジェクションモデルの宿命でそうなっちゃってます、とか、ここはこういう解釈のほうがいいんじゃないのかな、っていうところってあるでしょ。例えばさ、模型ではヒケがあるけど実物にヒケはないだろうとかさ」
「実は私もそういう“解釈”的なところは苦手なんですよ。模型がこうなってるんだから、これでいいやってなっちゃうことが多いんです」
「まあ、それも根気と作業との兼ね合いなんだけど、実はその“自分なりの解釈”っていうのがキャラクターモデルの楽しみの一つでね。『これはこういう仕組みで、こんなふうに使われるんだから、こういう構造でこんな色のはず』とか考えてると飽きないよ。むしろそれが一番楽しいといっても良いくらい」
「そういう“解釈”の元になるのは何なんですか?」
「それはやっぱり、今ある機械類とかの構造とか、今ある技術から想像するんだけどね。例えばその機械がどんな動力で動いているかによって模型の表現も変わってくるはずなんだよね。だから元になる作品の設定が曖昧だったりすると、非常に模型が作りにくい。逆にしっかりした設定が作られているものは、それこそ“解釈”の余地が大きくて模型を作っていても楽しいんだよね」
「ああ、動力が何かなんてあんまり考えたことありませんでした」
「これは作り手側の人から聞いたことがあるんだけど、『細かい設定があるとユーザーの自由を阻害する』っていってる人たちがいるんだよ。実はそれが大きな間違いで、しっかりとした設定があるからこそ、きっちりとした世界観が構築できるし、様々な解釈も可能なんだと思うんだよ。そういうところに説得力があるのが、いい作品なんだと思うんだけど。そういうところが曖昧だったり、非現実的だったりすると模型としての魅力も半減すると思う。大きな誤解だと思うんだけどね。もちろんフィクションなら、ある程度の嘘は必要だし、その辺の持って行き方がポイントになると思うんだけど、『なんかよくわからないけどこういうものがあります』っていわれても、っていう」
「それだと、なんかファンタジーっぽくなっちゃいますね。何でもありみたいな。そういうところを踏まえて、師匠が参考にする作品なり作例なりっていうのはあるんですか?」
「これはキャラクターモデルから外れちゃうんだけど、海外のモデラーの人が戦車を作っていて、全体の仕上がりも素晴らしいんだけど、エンジンハッチ付近だけが、やけにハゲチョロとオイル汚れのフィニッシュを見たことがあってね。これはもう見ただけで『エンジントラブルが多いんだろうなぁ』って想像できる。そういうのって面白いと思わないか?」
「そうですね。説得力ありますもんね」
「それと同じでさ、キャラクターモデルでも似たようなベクトルの表現って可能だと思うんだよ。むしろ“キャラクターモデルだからこそ”っていうか。そのひとつが、この記事で紹介したスケールエフェクトを利用した塗装だったりするわけで、『ホントはこうなんじゃない』とか『こうだったら楽しいよね』っていうところを探し出す。この間の作例のデルタプラスのメタリック塗装なんかもそうだよね。こうだったらカッコいいんじゃない、っていう」

「なるほど」
「ちょっと塗装の話から外れちゃったんで話を戻すと、このご質問をくれた方は、まず全体の明度を上げて塗ってみるといいと思う。それだけで指定色で塗ったものとは一味違う仕上がりになるはずだから。それも難しかったら、ポイントカラーの明度を上げるだけでもずいぶんと仕上がりが変わる。そうやって自分で色々やってみて、自分なりの方法論を構築していって欲しいなぁ。そういう挑戦は中々楽しいよ」
「そうですね。色々とやってみて欲しいですね」
「まずは考えることを面倒がらないこと。これが上達の第一歩かなぁと思う」

「さて、師匠。いよいよ『モデラーのための色彩学』も終了です」
「いやいや、ホントに色んなご質問が寄せられて、全部お答えしきれなかった。これについては『やたら模型制作室』や、この『技の泉』なんかでおいおいお答えしていければいいと思ってる」
「じゃあ師匠、最後に〆の一言をお願いします」
「なんだか大げさだなあ(笑)。まあ、模型作りは“面倒”も含めて楽しんでもらえばいいと思う。この記事がちょっとでも皆さんのお役に立てれば嬉しいね」
「じゃあ師匠、またお願いしますね」
「はいはい、こちらこそ」

『モデラーのための色彩学 特別編』いかがだったでしょうか。それでは次回の更新をお楽しみに。

<『モデラーための色彩学 その4』へ


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