編集(以下:編)「師匠、今回はユーザーの皆さんから寄せられた質問にお答えしようという企画です」
線香亭無暗(以下:無)「あれ、このコーナーは模型作りに役立つ“技”を紹介するんじゃないの?」
「それは師匠が書いてくれないからですッ! アレもあれも、アレだってお願いしてあるのに!!」
「う。薮蛇。で、どんな質問が来てるんだい?」
「じゃぁこんなのはどうです。kimonnさんからのメールで、『単純な質問ですが、プラバンの加工、特に切出しがうまくできません。どうしたら上手くなるのでしょうか』ということですが」
「ううむ、単純なようで難しい質問だね、それは」


◆直線の切出しの極意とは

「どうしてですか? 師匠はプラバンの切出しなんてお手のもんでしょ」
「そうでもないよ。しょっちゅう失敗する」
「頻度としては結構多い作業じゃないですか」
「まあねぇ――大体の大きさに切出して、元のパーツに貼り付ける、なんていうのは失敗することもないけど、精度が必要になるところ、例えば“2mm幅に何本か切出す”とか“1辺10mmの正四角柱を作る”なんていう場合は失敗することもある」
「ああ、確かに“同じ幅で何本も切り出す”っていうのはむずかしいかもしれませんね」
「これ、切り出す刃物の構造を考えると寸法が狂う理由がわかるんだけどね」
「え、どういうことですか?」
「プラバンが相手だと、大体カッターを使う人が多いと思うんだけど、カッターの刃ってよく見るとこんな断面になってるよね」

「そうですね」
「こういう刃の付き方をしている刃物を“両刃”っていうんだけど、カッターの刃って大体両刃なんだ」
「はい」
「だからカッターと定規を使って直線切りをしようとすると、下の図のような状態になる」

「はあ」
「定規を『切り出したい寸法』に合わせていると、刃の角度が付いてる分、外側を切り出していることになるんだね」
「ああ、なるほど」
「サイズが大きければ“誤差”で済むけど、切出す寸法が1mm、2mm幅となってくると誤差じゃすまなくなってくる」
「切出すサイズとの比率の問題ですね」
「そう。だから正確な寸法で切出す時は『定規を寸法どうりに当てる』んじゃなくて、まずカッターの刃を寸法どうりの場所に置いてから定規を当てて切るのが良い方法。後はよく研いだ切出しを使うとかね。切出しナイフは大抵片刃なんで、こういうことは起こらない。もちろん『切断面に対して直角に切る』というのは基本中の基本だよ」

「片刃のカッターナイフってないんですか?」
「前に『カクイ印の片刃カッター』っていうのを見つけて使ってみたことがある。Lサイズ用の片刃のカッター刃なんだけど、中々調子がよかった。調べてみたら新潟県 三条市の外栄金物株式会社っていう会社が販売してるみたいだね。残念ながら使い切っちゃって手元にないんだけど。もっと手に入りやすくなればレギュラーツールとして手元においておきたい刃物だと思う」
「師匠は普段どんなカッター刃を使ってるんですか?」
「貝印の『職専 超鋭角』っていうヤツ。名前どおり普通の刃より鋭角なんで“誤差分”が少ない。それに切れ味がすごいんだよ。濡れた和紙でもスッパリ行ける。ただし紙用なんで、プラ相手に使っているとすぐに切味が落ちる。しょっちゅうポキポキ折りながら使ってるよ。刃物の切味は便利な専用工具よりもはるかに重要で、使い手があるからね」

「へぇ~、どこで買えるんですか?」
「最近では普通にネットで買えるよ」
「じゃぁ今度探してみます」
「それから、切出し寸法が小さい時にはメモリ付きの補助ツールが役に立つこともある」
「それってどんなものです?」
「HiQpartsのマス目ツールとか、最近タミヤから発売された方眼のマスキングテープとかさ。そういうものをプラバンに貼ってラインの真上を真っ直ぐに切断できれば、わりと簡単に正確な直線切りができる」

「その『直線に切る』っていうのが難しいって方も居ると思うんですけど」
「うーん、もっと基本的なところね。まず第一はよく切れる刃物を使う。次は一度に切ろうとしないで何度かなぞるようにする。厚手のプラバンの時には結構力を入れがちになっちゃうんだけど、そうすると線がゆがんだり切断面が斜めになったりして良い事はない。なにより大事なのは同じぐらいの力で同じ直線をなぞれるようにすることだね。慣れちゃえば0.3mmくらいの線を1/2で切り分けることぐらいは意外と簡単にできるようになる」
「難易度高そうだけど……何事も慣れってことですね」
「刃物の扱いの基本は切れ味と力加減、それと動かす方向の3つ。まさに“習うより慣れろ”だね」


◆曲線の切出しはどうすれば上手くできる?

「直線の切出し方は大体わかりましたが、曲線の場合はどうしてるんですか?」
「円のような平均的な曲線を切出すならサークルカッターを使う。サークルカッターで対応できないような小さい円とかはポンチで抜いちゃう」
「じゃあ、もっと複雑な、途中でRが変わるような曲線や、複数の曲線が組み合わさったようなものはどうしてますか?」
「ガイドラインを直接プラバンに書いて、デザインカッターで切り抜くか、欲しい形をPCで作ってプリントしたものを貼り付けて切抜くか、どっちかだなぁ」
「また難易度高そうですねぇ」
「そうだねぇ。曲線の場合は、ある程度切出し後の修正をするのが前提になることが多いかなぁ」
「同じ形のパーツを複数切出すときなんか、同じ曲線にならなくて苦労することありますよね」
「そういう時は瞬間接着剤の点付けで何枚かプラバンを止めておいていっぺんに切出して後から修正するのが確実かなぁ。まあ、これも慣れがいるといえばいるけど」
「もっと簡単にビシッと作る方法はないんですか?」
「あればやってる(笑)。最近ではカッティングプロッタなんてものを使う人も少しずつ増えてきてるけどね。これはPC上で作ったデータを切出す機械なんだけど、これだと曲線もしっかり形になる。最も現状で一般的に発売されてるのはもっと柔らかいものを切ることしか想定してないんで、プラバン加工はちょっと厳しいかな。業務用のは車を買うより高いしね。まあ、そのうち需要が増えてくれば民生用に廉価で高性能のカッティングプロッタが発売されるかもしれない。それまではやっぱり手と目とカッターが頼りだと思うよ」


◆プラバン加工の未来とは

「いずれはPCで模型のパーツを作る時代が来るんですかねぇ。なんか味気ないような……」
「いや、本当に手間がかかるパーツを切出すのに使えるなら便利じゃない? カッティングプロッタだって道具だしさ。本当にそれが必要で、使える状況なら使えば良い。ただカッター使って簡単に切抜けるようなものにプロッタを使うのはナンセンスだと思うけど」
「あ、意外なコメントですね。『手作りの温もりが大事だっ!』とかいうのかと思ったら」
「だって、今だってパーツを作るのにPC使ったりするもん。設計図引いたり。ただ出力機を持ってないだけで。そんな事言ってたら旋盤やフライス盤なんかはどうするの。結局『電動工具は使用禁止』みたいになっちゃうじゃない」
「いや、旋盤やフライス盤はそれなりの技術がいるじゃないですか」
「カッティングプロッタ用の図面引くのだって技術はいるよ。極端に言うとCADで設計したプラキットだって個性と技術の塊みたいなもんじゃないか」
「まあ、そりゃそうですけど……」
「カッターにしろプロッタにしろ、旋盤だってフライス盤だって道具なんだからさ。それなりの技術はいるんだよ。まあ、自分は全て持ってないからマニュアルなんだけど」
「う、絶対持ってそうな口調だったのに……」
「でも両方とも結構うまく使えるよ。昔、人ん所で練習したから。ちょっと脱線したんでプラバンの切出しに話を戻すと、例えカッティングプロッタを使うにしてもカッターで上手に切出す方法を知っている人はデータの作り方も上手いし、複雑な形状も上手に抜く。『刃物で板状のものを切り抜く』って言う作業の原理は変わらないからね。それに、それぞれの道具の特性が加わるだけで、結局、さっき話したカッターの刃の種類の話と大差ない」
「ううむ、なんかそれはわかるような気がします」
「物事の仕組みがわかっていて、目的がはっきりしていれば手法がわかるって事だと思うんだけどね。逆に手法がわかっていれば必要な道具がわかる。道具だけあっても上手にできるわけじゃない」
「難しい話になりましたね」
「別に難しいとは思わないんだけど……模型に限らず、作り物って絶対にプロセスがあるんだよ。結果だけがあるなんてことはない。その辺を上手く省略するならいいんだけど、無視してしまうと絶対に完成にこぎつかない。プラバンの切出しってことで考えるんなら、刃物の使い方を考えないと絶対に上手くならない。そういう工夫が積み重なって完成するから、模型って楽しいんじゃないかと思うんだけど」
「確かにそのとおりですね。心を入れ替えてがんばります」
「まあ、がむばってくれたまえ。ハッハッハッハッ!!」
「なんかムカつくなぁ……」

久々の更新となった「技の泉」いかがだったでしょうか? このコーナーでは皆さんからの質問や聞いてみたいことなどを随時募集しております。お気軽にメールフォームからお問い合わせ下さい。


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