前回ご好評をいただいた「トレフェスin有明4 イベント アフターレポート」。今回は2回目をお送りしよう。今回はフィギュア塗装についての内容がメインとなったが、“塗装”という技術や“調色”について大変面白い内容となっている。2010年12月12日、有明の東京ビッグサイトにて、ガイアノーツ矢澤乃慶氏、フィギュアフィニッシャー/模型ライターのクボワタル氏、フリーライター/模型製品プランナーのヤマザキ軍曹殿、MPJメインモデラー線香亭無暗氏により、「トレフェスin有明4 イベント」で行われた熱いトークをお楽しみいただければ幸いだ。

 

Q.フィギュアをパテや瞬間接着剤で処理した後がサフレスで塗装した後に目立ってしまうのですが、うまく処理する方法がありますか?

クボワタル氏(以下 ク)「じゃあ、私が説明します。ご存知のようにガレージキットの場合、気泡が入っていたり、パーティングラインの所に段差ができていたり、接合部に隙間ができてしまったりということがあって、それを何とか埋めてあげないといけない。サフレス、つまり地の色の上に透明の塗料を少しづつ吹いて、塗料を重ねて色を出していく場合、気泡を埋めたところに色が付いてしまうと具合が悪いわけです。全部透けて見えちゃうわけですから。例えば腕の接合部なんかにポリパテを使うと黄色いですから、塗りあがった時に黄色い腕輪をしているように見えちゃう。そんな時にどうするかというと、できるだけ成型色に近いもので埋めましょう、と」
ガイアノーツ矢澤氏(以下 ガ)「なるほど」
「その時によく私が使うのは『瞬間接着パテ』。この中に入っている粉だけ使うんです。これに瞬間接着剤を混ぜて使う。固まるのが早い「ハイスピード」の瞬間接着剤を使うとパテ代わりにならないんで、できるだけ硬化が遅い『高強度』というようなものを使って穴を埋めていく。それでも瞬間接着剤なんで30秒位で固まっちゃいます。そうするとわりとレジンの質感に近い感じで埋められます」
ヤマザキ軍曹殿(以下 ヤ)「小麦粉とか石膏でもいけますよ」
「よくベビーパウダーを使うっていう人もいますよ」
線香亭無暗氏(以下 無)「ベビーパウダーって結構“粒状感”でますよね。なんか“ツブツブ感”がでませんか?」
「そうですね。でも削るときはサクサク削れる」
「ああ、なるほど」
「私の場合は『瞬間接着パテ』と瞬着なんですけど、この粉だけ出してくれないかなぁ、と(笑)。で、この瞬着なんですけど、できれば口を切ってから半年くらい経ったやつ、“接着剤としては使えないんだけど、ギリギリ固まってくれる”っていうくらいのやつを使うと、すごく具合が良いんですよ。さっき30秒位で固まるって言いましたけど、それが1分くらいに伸びますから」
「作業時間が必要ってことですね」
「埋める部分が大きいときは、キットの切り取った不要な部分、湯口とかを削って埋めてあげるとか、極力成型色と同じ色でやろうと。で、極力そういう努力はするんですが、それでも出ちゃうときはある。例えば今日持ってきた、そのフィギュアなんかは二の腕の所で分割されてるんで、よく見るとわかる」
「ああ、ホントだ」
「完全に消すことはできないんです。それでも悪あがきして接合部のところにベースのホワイトを吹いて、その上からクリアーを厚塗りしています。サフレスの塗料を塗る場合、ホワイトの上に直接吹いてしまうと、ホワイト層の中に染み込んでいっちゃうんですよね。そこだけ妙にオレンジっぽく浮いてきちゃうんで、それをおこさないためにクリアーで保護層を作ってあげる。まあ、それだけ悪あがきしても、後でよく見ると、やっぱり継ぎ目は出ちゃってることが多い。それでも何とかしなきゃいけないわけですけれども、そういう時も結局、塗装でごまかすしかない。塗装をする時に接合部だけ“気持ち”塗料を多目に乗せていくとか。そのフィギュアの場合は二の腕で分割されちゃってますが、本当ならヒジで分割されているほうがごまかしやすいんです。ヒジの内側っていうのは陰になるわけですから」
「はぁ~、じゃあ色々ごまかしながらやるってことですね」
「そうですね。(目前のカーモデルを挿して)こういう車の模型なんかだと、ホントに塗装でのごまかしとか利かないんですけど、幸いフィギュアだと『目の錯覚』とか、やっぱり顔とか胸とか足とか、“目が行く所”があるので、それ以外のところはあんまり気にならないんですよ」
「それはメカでも同じような気がするんですけど」
「同じですよね。特にロボットはごまかしが利くかもしれない」
「わりと、出来ちゃうとなんとなく納得しちゃう、っていう所が(笑)」
「オレなんかは、白いプラパテに塗料を混ぜてしまうこともある。そうすると成型色に近い色にはなってくれると思いますけど」
「私の場合は、あきらめてサフ吹きます(笑)」
「それ、正解!(笑)」
「はい、わかりました(笑)」
「本当にどうしようも無い場合、例えば鼻の頭に気泡がある、なんという場合は、やむなく“白のサーフェイサー”で処理します」
「経験上、白いサーフェイサーを吹いて上から塗装した時に“大きく(サフの)影響出ちゃうよね”っていうときは、塗装環境が整っていないことが多いですよね。湿度とか温度とか、塗り重ねる塗料の濃度とか。そこへんの調整である程度は回避できると思いますよ」
「なるほど」
「(前においてあるフィギュアを挿して)本来、そのフィギュアは絶対サフレスには向かない分割なんですね。まあちょっと試しにやってみようという事でサフレスで塗ったんですが。だから仕事でやるときには、そういうふうにはしないですね」
「でも、水着のフィギュアだったりすると、殆んどそういうところに分割があったりしますよね」
「これは原型師さんに聞くとわかるんですけど、目立たない所に分割を持ってくるのに大変苦労なさってるんです。昔のフィギュアで、“必ずフトモモの真ん中で切れてる”っていうフィギュアがあって、その方が原型のフィギュアは必ずそこで切れている。それには閉口しましたね(笑)」
「まあ、そのあたりは状況にあわせて試してみるという事になるんですね」


Q、フィギュア作りにはどんな道具を使うの?

「で、ついでですので、よく『どんな道具を使っているのか?』という質問をされるので、一通り説明いたしますと、実はそんなに大げさにモノを揃えているわけではなくて、“ニッパー”、“ピンバイス”、“デザインナイフ”。この3つあれば、たいていのものは作れちゃいます」
「なるほど」
「あと必須なのは“コンプレッサー”と“エアブラシ”。前回のイベントの時に『筆塗りで何とかフィギュアが塗れませんか』という質問があったんですけれども、残念ながらコンプレッサーをお買い求めください、と。あとはマテリアルとパテ類、塗料。あと、マスキングのことは後で触れますけれど、普通の模型屋さんにあるマスキングテープと筆。筆も私の場合には本数は少なくて、目を書く時に使う一番新しい筆、『一軍』って呼んでますけど、これは大体フィギュアを3体作ると新しいものに変えてます。それを降ろしていってほかの所を塗るようにしています。他の模型を作られる方はわからないんですけれども、私は平筆とか大きめの筆とかは殆んど使わないんですよ。どんな所でもエアブラシで、根性でマスキングして塗っちゃって、修正のときだけ『二軍の筆』で修正する。目を入れるところだけ『一軍の筆』です。実質、同じ種類の2本の筆で全部塗っちゃいます」
「はあ~なるほど」
「で、これは何かというと、画材屋さんで売っている“紙のパレット”。筆で塗るときにはこの上で混ぜます。後は塗料用の金属のお皿。私はこれをダース単位で箱買いしてるんで、家に売るほどあるんですけど(笑)」
「後でバラで安く売ってください(笑)」
「あとはガイアさんで出している、これがなくては作れないという“フィニッシュマスター”。説明しづらいんですけど、綿棒の高級版みたいな」
「そうなんですよね。フィニッシュマスターってなんて説明したらいいのか、難しいんですよね」
「それ、すごく使いやすいよね。別にガイアノーツの商品だからいう訳じゃないけど(笑)」
「すごく吸い取るんですよね」
「だから、これをなんと説明したらいいのか(笑)」
「いや、使ってみないと解らないでしょ! 説明しようが無いねぇ。フィニッシュマスター使ってから、スミイレの拭き取りに使う綿棒の消費量も減ったよ」
「私、目を描く時に調子が悪いとめちゃくちゃはみ出すんですけど、綿棒で拭き取ると、どうしてもエッジの部分とかが残っちゃうんですよね。ところがこれだとかなり吸い取ってくれるんで、これが無いと私、目が描けない体になってしまいました(笑)。だから末永く作ってください」
「わかりました」
「細かいデカールを貼るときの押さえなんかにも良いですよ」
「デカールの気泡を取るのにすごく良いんだよねぇ~」
「そうそう、綿棒だと一気に水分を吸い取っちゃうんで、デカールがずれたりするんだけど、これだと丁度いい水分の吸い込み具合でずれない。これを使うまでは発砲ウレタンとか特殊なスポンジとかを東急ハンズで買ってきて、細く切って使ってたりしたんですけど、それよりもはるかに便利が良いんで、じゃあ、みなさんひとつずつお買い上げになってから帰ってください(笑)」
「ぜひ宜しくお願いします(笑)」
「っていうか、先っちょだけいっぱい作ってくださいよ」
「まあ~~、そうなんですよねー」
「その辺は色々難しい大人の事情が(笑)……」
「あと使う道具はガイアさんのものではないですけど、“タイラー”っていう台座が付いてる紙ヤスリなんですけど、これがめちゃくちゃいいんです。普通皆さん平面に使うと思ってらっしゃる方が多いと思うんですけど、私はフィギュアの曲面にも使うんです。このエッジの所を使って奥まった所をちょちょっとやると、うまいことヤスリがかけられる」
「ほ~お」
 

Q.フィギュアにはどんな塗料を使うの?

「普通、例えば飛行機のプラモデルを作ると説明書に細かく『何番の色』っていう指定があって、そのとおりの色を塗れば完成しますよ、っていう体裁だと思うんですけど、私の場合、フィギュアではそういう塗り方はしません。どういうふうにやっているかというと、『艶消しのホワイトをベースにガイアさんで出している“純色”の5色を使って全部の色を作っていく』というのを基本にしています。というのは先ほどもいったように、フィギュアの場合は影色とハイライトっていうのを同じ系統の色で作っていく、白を混ぜたりしてコントロールしていく訳ですが、出来合いの色をベースに白を足したりすると、すごく色が濁るんですよね。例えば、ちょっとくすんだ緑に白を混ぜると、すごくスミっぽい緑になったりする。特に女の子のフィギュアなんかを塗るときにはコントラストが下がってしまうし、暗い印象になる。できるだけ明るくしたいなっていうときには、それを使わないようにしています。組み合わせて使うのが純色5色と白と黒。それを基本にしています」
「はい」
「あとはブライトレッド、サンシャインイエロー、ピュアオレンジ。これは何に使うかというと、サフレス用の肌色を作る時に使う色です。例えばオレンジを作るとすると、万年皿に赤と黄色をほんの少し“ちょんちょん”っとたらしておいて、そこに擦切り一杯クリアーを入れるんです。それをさらに薄め液で3倍くらいに薄めたものをエアブラシで吹いています。で、なぜこっちの(純色で作った色)を使わないかというと、なぜかわからないんですが、そういうふうに作った色のほうが若干色が濁る。その方が“肌色”っぽく見えるんですよ。クリアーレッドとかクリアーオレンジとかでサフレスをやられている方もいらっしゃるんですけれども、それだと肌の質感がかなり硬質になってしまうんですよね。なんだか『膜が一枚のっている』ような感じになってしまうんで、わざと色を濁らせる。それとフラットベースを大量に入れて、光線を拡散させてやって柔らかさを出す」
「なるほど」
「あと、これは他にもやられている方がいるかもしれないんですけど、革靴を履いてるキャラって多いですよね。学校の制服とか。その革靴を塗るときには、クリアーにちょびっと黒を入れたものをガンガン吹き重ねていく」
「そうやって光沢を出していく、と」
「そうですね。そうやって“スモーク”みたいな色を重ねて黒にしていくと、ワックスをかけたような艶が出てくるんで。フィギュアの塗装って、好みにもよるんですが、艶消しか半艶なんですけれども、一箇所だけ光沢を入れてあげるとか、持ち物なんかでもちょっと光沢を入れてあげると、それで結構グッと引き立つんですよね」
「メカモデルなんかでも、そういうちょっとしたアクセントで質感を変えるっていうのは面白いですよね」
「面白いですよね。というか、それが立体として映えさせる方法、というか。コントラストとかアクセントをつけることによって形状や彫刻がさらに浮き上がってくる。それは効果があるよね」
「そうですね」
「それでですね。純色をベースに白と黒で色を作るっていったんですけど、例外がありまして、茶色がすごく苦手なんですよ。純色の組み合わせで茶色を作ろうとすると、もうドツボにはまって、永遠に茶色ができなくなる。そこで、ガイアさんに救世主のように作っていただいたのが、この『髪の毛の色のセット』なんですけれども」
「これも開発時にはクボさんに見ていただいて」
「はい、この黄色いのとか、あと栗毛は一番使いますよね。世の中にはいろんな塗料が出てますけど、普通の茶色は基本的にミリタリー系が多いんで、髪の毛色のような茶色を作ろうとすると物凄く難しい。これのどこがいいかというと、さっきも言ったようにハイライト用に白を混ぜても、その色(色相)を維持してくれるんですよ。栗色に白を混ぜると、明るい栗色になってくれるんで、すごく重宝してます」
「“ビゲンヘアカラー”みたいな感じですか?」
一同「……」
「すいません、しばらく喋ってなかったんで、なんか言いたかっただけです(笑)」
一同 笑
「後はガイアカラーのサフレス用カラーについてですが、これはクリアーをベースに“黄色っぽいもの”と“赤っぽいもの”のセットを作っていただいたんですけれども、これ、“赤だけ”とか“黄色だけ”って使うと不自然な色になると思います。好みやキャラクターに合わせてこの2色をブレンドすると、いい塩梅のところが見つかると思います。ちょっと試してみていただきたいと思います」
「はい」
「ただ、この状態(ビンに入った常態)でかなり濃いんで、ブレンドしていただいて、さらにクリアーで調整して、さらにエアブラシで吹く用に薄め液で薄めていただくという感じです」
「(薄め液を足したときの)塗料の濃度はどれくらいですか?」
「あまり薄くすると上手くいかないんで、なるべく濃い目を意識して塗るようにしています」

トレフェスin有明4 イベント アフターレポートはまだまだ続きます。次回はちょっとした業界裏話や、「塗装」についてのより広い内容となる予定です。楽しみにお待ちください。


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