MPJ技の泉、今回は線香亭無暗師匠にフィギュアを塗装してもらいます。はてさて、どんなことになるのやら。お楽しみください。

■線香亭無暗、萌えフィギュアを塗る

編集部(以下編):師匠、今回はフィギュアを塗ってもらいます。
線香亭無暗(以下無):フィギュアって、AFVの?
編:違います。これです。

無:ええーっ! 思いっきり萌え系じゃないか。
編:そうですよ。ガイアノーツさんから新しく出た「1/6胸像タイプ プラクティスキット YUKI」ちゃんです。
無:無理だよ。ムリムリ。その手のフィギュアなんて塗ったことないもん。最後にガレキのフィギュア作ったのなんて20年以上前だもん。
編:まあまあ、そう言わないで。食わず嫌いはいけないって、師匠いつも言ってるじゃないですか。
無:でもさぁ、ほら、フィギュア用の塗料もないし……。
編:そういうと思ってガイアさんにお願いしてフィギュア用の塗料をご提供いただきました。

無:ううう……全く、そういうところだけは手配が良いんだな。で、いつまでに塗ればいいんだい?
編:今です。今。ガイアさんに『師匠がすぐに塗ります』って言っちゃったんですから。それじゃあ僕、別の打ち合わせがありますんで、ちょっと行ってきます。しばらくしたら戻りますから、ちゃんと塗っといてくださいよ。じゃあ、いってきまーす!
無:おおーい、ちょっと!待てよ!

――2時間後――

編:ただいまぁ~。師匠ちゃんと塗って……、ああっ! また変なもの塗ってる!!
無:変なものじゃないよ。練習してたんだよっ!

編:これなんですか?
無:ガイアノーツの「ノーツちゃん」。一昨年の年末にトレフェスのイベントに出たとき、なんか無性に欲しくなって、ガイアノーツの矢澤さんから奪ってきたまま放置してたやつ。
編:一年で首だけだと、完成するのに5~6年かかりますね。
無:いや、そういうことじゃなくて……。
編:あ、そうだ。YUKIちゃんはどうしたんですか。YUKIちゃんは!
無:ちゃんと作業してるよ。

編:何ですか、これ?
無:ガレキに付き物の気泡を埋めたんだよ。襟のところは湯口を削って貼り付けて、髪の毛の所は瞬着で埋めた。
編:それだけですか?
無:いや、持ち手もつけたぞ。1mmのピンバイスでパーツに穴をあけて。もうこれで完璧だ。

編:全然完璧じゃないっ! 早く塗ってくださいよ。時間ないんだから。
無:わかったよ! 今塗るよ!!

■線香亭、サフレス塗装に挑戦してみる

編:で、師匠。今回はどんな手法で塗るんですか?
無:うん、この間“トレフェスin有明4”のイベントで聞いた、フィギュアフィニッシャーのクボワタルさんが言ってた「サフレス塗装」に挑戦してみようと思う。
編:いきなり自分でハードル上げてませんか。
無:良いんだよ! こうなりゃ本気で塗らないと気がすまない。まあ、基本的な塗装法を説明すると、基本色に大量のクリアーを混ぜて『基本色のクリアーカラー』を作っておいて、それを陰影や凹凸にあわせて塗り重ねていくっていう手法だね。そこで、基本となる肌色を作っておいた。ノーツフレッシュをベースにハイライト用のピンクやフラットホワイトなんかを混ぜたもの。

編:ずいぶん色白な感じですね。
無:いや、この色はあくまでも基本色でしょ。キットの白の上に乗って、トップトーン、いわゆるハイライトになるような色が良いと思ったんだ。この色を塗り終わったらシャドウ部分を入れていこうと思ってる。
編:ああ、そうすると後でハイライト部分を塗装しなくてもすむ、と。
無:そう。基本的に2色のグラデーションでいけるんじゃないかと、さっきノーツちゃんを塗ってて思った。
編:じゃあ、早速塗りましょう!
無:せっかちなやつだなぁ。

編:だいぶ薄い色ですね。
無:最初のひと吹きだからね。この後、どんどん塗装を重ねていく。その時に、塗料の重なりの効果を大きく出したければ下に塗った塗料が乾いてから、それほど大きな効果が必要ないときには、生乾きぐらいで塗り重ねるといいみたいだ。
編:へえ、なるほどねぇ。

無:はい、1色目終了。だいぶ肌色になった。
編:ずいぶん塗り重ねてましたね。
無:うん、失敗しないように、塗料にずいぶんクリアー混ぜたからね。最初に作った色に70%くらいクリアーを入れた。それを調子をつけながら5回くらい吹き重ねたのがこの状態。次はシャドウ部分を塗るよ。

■シャドウを加えてより立体的に

編:シャドウ部分にはどんな色を塗るんですか。
無:ディープサフレスピンクにさっきの基本色を足したもの。ここに若干のクリアーを混ぜていく。ガイアノーツのサフレス系の塗料は最初からクリアー系なので、クリアを足すときは加減が必要だよ。
編:なるほど。

無:で、シャドウ部分も吹いて、塗りあがったのがこれ。

編:なんだかサフレスっぽくないですね。
無:それは光沢が出すぎてるんだと思う。シャドウ部に使った色が、大分光沢が出ちゃったからね。微妙なグラデーションは同じような反射率でないと、うまいこと見えないんだと思う。
編:ええっ! じゃあこれは失敗?
無:何とも失礼なやつだな。こうすればいいだろ。

編:なるほど。すっかりサフレスっぽくなりましたね。
無:フラットクリアーを吹いて艶を落ち着けた。まあ、欲しい質感が出てればサフレスでも何でもいいんだけど。お次は胴体に行くよ。

編:これも最初はずいぶん薄いですね。
無:元になった色はエメラルドグリーンに少しづつ純色グリーンを足して作ったもの。顔と同じように70%ぐらいクリアーが入っている。これを何度も繰りかえし重ねていくとこうなる。

編:へえ、それっぽくなってきた。
無:“それっぽくなった”んじゃなくてそれっぽくしてんだっ!! 次は髪の毛に行くぞ。
編:ええっ、まだ胴体を塗り終わってないのに。
無:乾燥時間を利用してどんどん別の作業をするの! それが早く仕上げるコツなんだから。
編:……わかりました。

無:さあ、今回の髪の毛は赤く塗るぞ。ということで、プレミアムレッドに30%くらいクリアーを混ぜたもの。
編:あれ、今度はクリアーが少なめですね。
無:プレミアムレッドは元々透ける塗料だからね。それくらいが丁度いいんだ。で、お決まりのようにシャドウ部分を吹いてみた。

編:赤いとわかりやすいですね。
無:そうだね。でも髪の毛は何度も塗料を重ねずに、この後一気に全体に吹いちゃう。

編:どうしてですか?
無:赤い色は他の色とちょっと違っていてね。『暗順応』って言う効果を起こしやすい色なんだ。光の当たらない部分は極端に黒く見えるっていうね。だからこの上にいくら赤を乗せていっても影っぽく見えない。クリアーブラウンをベースにクリアーレッドを入れた塗料でシャドウ部を足してあげようと思ってるんだ。
編:へぇぇ、色々あるもんなんですねぇ。じゃ師匠、夜も遅くなったんで、私、帰ります。後はよろしく仕上げといてくださいね。明日も来ますからぁ。じゃっ!!
無:ええー!! ああーっちょっと待て! コラッ!!

■仕上げは試行錯誤の筆塗りで

――翌日――
編:師匠できましたかぁー。おっ、ずいぶん進んでるじゃないですか。あれ、ここまでの写真は?
無:撮ってない。
編:とってないじゃなくて!
無:うるさい!! 塗装に一生懸命で写真撮るの忘れたんだよっ!! 基本的には昨日までの繰り返しなんだからわかるだろう。
編:ザックリだなぁー。

無:じゃあ、ここまでの“失われた時間”の間の作業を説明しとくと、まず胴体の塗り残しの部分、お腹から胸の下部分はそれまで塗ったグリーン部分にマスキングをした後、同じグリーンで塗装した。ただし、今度は吹き重ねる回数を倍ぐらいに増やして一段濃いグリーンに仕上げた。襟部分はマスキングしてアルティメットホワイトにほんの1~2滴純色シアンを入れたもので塗装。全部が乾燥したら、またマスキングして胴体のサイド部と襟のラインをスターブライトシルバースターブライトアイアンを少量足したもので塗装。この時のポイントは溶剤にメタリックマスターを使ったことかな。輝きが違うからね。
それから髪の毛は、昨日言ったようにクリアーブラウンクリアーレッドを混ぜた色でシャドウ吹き。ちょっと落着きが欲しいかな、と思ったんで全体にも軽~く一層吹いた。
そうして全体の塗料の乾燥を待って、白目とヘッドホン部分を残してマスキング。目玉は襟と同じ色、ヘッドホンはアルティメットホワイトそのままで塗り、眉毛をタミヤエナメルのクリアーレッドで塗り、うんと薄めたエナメルのクリアーレッドで目玉の下書きをした、と。どうだ! これで上の写真になったんだ!!
編:どうだっていわれても……。まあ、しょうがないですから先に行きましょう。
無:じゃあここからは目玉の書き込み。まず下書きで大体のイメージがつかめたら筆で瞳の輪郭を描いていく。今回はエナメルのブラウンを使った。ついでに上まぶたのアイラインも軽く入れている。

編:なんとなく様になってきましたね。
無:瞳が入ると生き生きしてくるね。続いて瞳の中の部分をクリアーレッドで塗りつぶす。あんまりうまくいってないんだけど、目玉の丸い感じを出すのに調子が出るように塗っている。
編:なんとなくわかりますけど。ここはブラシじゃいけないんですか?
編:塗りたい形状がはっきりしてるんだったらマスクして塗ればいいんだけど、なんとなく描いてみて決めたかったんだよ。本当は最初にやっておくべきだったのかもしれない。フィギュアを作りなれないのがバレるな。
編:でもなんだか可愛らしくなってきましたよ。

無:続いては黒目の虹彩の中の部分。黒目の中心だね。黒目がちな感じを出そうと思ってエナメルのブラウンにクリアーレッドを混ぜたもので大きめに描いた。
編:おお、だいぶ表情がでてきましたね。
無:そうだね。よく“フィギュア塗装は目が命”っていうけどホントだね。極薄いクリアーレッドとクリアーオレンジでアイラインを入れたら、ホワイトで瞳のハイライトを足してあげれば目玉は完成だ。目玉に使ったエナメル塗料は全部艶ありでね。

編:後は組み立てれば完成ですか?
無:いや、組み立てた後にそれぞれの色にあったエナメル塗料でかるーくスミイレしてある。髪の毛や肌との境目にはクリアーレッド、洋服のグリーン部分はクリアーグリーンでね。
編:早く完成した所が見たいです。
無:ではどうぞ。

編:結構ちゃんと塗れてますよ。たいしたもんです。
無:煽てても何も出ないよ。各面はこんな感じ。

編:胴体サイドのシルバーカラーが利いてますね。
無:この娘、結構巨乳なんだよ。うまいこと陰影がでればいいなと思ってさ。
編:イヤたいしたもんです。
無:だから、煽てても何にもでないって。
編:いや何も出さなくていいですから、模型制作室の作例もお願いしますよ。
無:こんなことやってたら終わるわけないだろ!!
編:イヤイヤ、師匠ならダイジョブですって。じゃあこのフィギュア、もらって行きますから。
無:え、持ってちゃうの? 何で??
編:あれ、言いませんでしたっけ。このフィギュア2月6日のワンフェスでガイアノーツさんのブースに展示されるんですよ。他の模型関係の方も作られてるって言ってましたけど。
無:全然全く聞いてない。っていうか結構気に入ってたのに、それ。
編:じゃあ今度は自分で買って作ってください。じゃっ!!
無:ああっ! オイ、待てよ!! 

MPJ技の泉「線香亭無暗、萌えフィギュアを塗るの巻」。お楽しみいただけたでしょうか。本文中にもあるように、この作例は2月6日幕張メッセで行われる「ワンダーフェスティバル2011[冬]」のガイアノーツ様ブースにて展示予定です。実物をごらんになりたい方は是非とも足をお運びください。
※搬入の都合によりこの作品の展示が会場時間より遅れることがありますのでご了承ください。


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